初心の趣

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奥能登国際芸術祭2023を地震に負けず回る第四日目その1(原嶋亮輔「Future Past 2323」)

能登国際芸術祭2023の鑑賞も残り3つの作品となった。

その三作品のために、日を改め鑑賞旅第四日目を行ってきた。

第三日目の続き、最後のエリアである若山エリアにあるNo.46の作品から紹介したい。

 

 

第四日目開始

前回記した、若山エリアの旧上黒丸小中学校の3作品の鑑賞を終えた時点で、鑑賞パスポートの未スタンプは残り3つとなっていた。

公開終了時刻の17時も回ってしまっていたので、その残り三作品はまた後日とした。

それから約1ヶ月後の11月3日(文化の日)、残り三作品の鑑賞のため、そしてパスポートコンプリートのため、再び珠洲市へと向かったのだった。

第四日目である。

第四日目はここからスタート

第三日目の続きとして同じ若山エリアにあるNo.46の作品から見て回ることにした。

この古民家がその展示場所だ。

吉ヶ池の民家で、2020+のときにも別の作品で展示場所になっていたところであったので、結構な山の奥にあるのだけど、自分としては不安なく、迷うことなくやってこれた。

 

餅つきしていたのは自分です

会場は建物の中なのだが、その前庭で地元の方々が餅つきをしていた。

ここで

そうして急に話しかけてきたお父さんの一人に「ついてみるか~⁉」とでかい声で誘われた。

どうやら杵でついていた高齢のお父さんを休ませたかったみたいだ。

自分としても断る理由もなかったのでお手伝いをするのだった。

ここで杵を持って臼の餅をついていたのは、自分です。

餅つきなんていつぶりだろうか?

大人になってやった記憶があまりない。

子供の頃、祖父母の家では土間で臼と杵を使って餅つきをしていたので何度か手伝ったことはあるのだけど、遠い記憶である。

感覚を取り戻すように一打一打ついていた。

十分につけたところで、お役御免となり、自分も玄関へと向かって作品鑑賞の受付を始めるのであった。

 

 

46番 原嶋亮輔「Future Past 2323」

46番だ

金沢市を拠点に家具デザイナーをしている原嶋亮輔さんの「Future Past 2323」という作品だ。

玄関に入ると、土間ですぐにカメムシの臭いがした。

自分はカメムシの臭いが苦手なのですぐにわかった。

受付をしてくれた方にも「カメムシがいっぱいいますが…」と言われたくらいだ。今年はなにせカメムシが大量発生している。

靴を脱いで上がっていく

ちゃんと誰の靴かわかるように番号付きの札も用意されていた。

コロナ禍の頃だったら、この札もいちいち消毒だ何だで使われることも少なかったと思うけど、そういったやりすぎた感染対策ももうないので、おもてなしや気遣いが思う存分行われている感じがした。

受付にてこんな案内を渡される

この「Future Past 2323」という作品は複数の作品で構成されていて、それぞれの題名と概要(ストーリー?)が書かれてあった。

裏面も

裏面もあり、合計で11個の作品が展示されているという。

これやガイドブックによると、吉ヶ池の人々との交流から見つけた古民具や農具を使って現代的な家具に生まれ変わらせたようで、しかも現代と言っても300年後の2323年という未来を想定してのものなんだそうだ。

何を言っているのか分かりづらいかも知れないが、要は、「現代では使われなくなった道具や農具が300年後にこんな形でリサイクルされてました」といった空想を実際に形にした作品なんだと思えばいいようだ。

百聞は一見にしかず、ということで一階にあった作品から順に追っていきたい。

 

一階を観て回る

ちなみに一階ではこんな並びで作品が展示されていた

「作品」としか書かれていないので、どれがNo.〇〇の作品だとかはこれでは解らなかった。

本当ならNo.1から見て回ったほうがわかりやすいのだろうけど、どれがそれかこの時点では分からなかったので、目についたものから見ていった。

土間から上がって真正面に見えたのがこちら

作品の下に敷かれたマットに作品No.と英字タイトルが書かれてあった。

こちらはNo.2の「宇宙へ焦がれる人類へ」という作品だ。

かつて炭の藁(たわら)を運ぶための橇(そり)だったものだ。

300年後には宇宙へと飛び立つ宇宙船になっているかも?

そんな空想を見立てて作られた作品だ。

宇宙空間でも耐えれるように遮蔽物はないの?というツッコミを入れたくなった方は『ドラえもん』の「ひみつ道具」を思い出していただければ良いかと思う。

ドラえもん』で時空間を移動するタイムマシンに屋根があったかい?遮蔽物があったかい?車のようにボディに包まれていたかい?

ノーだ。それと同じだ。

それくらいのライトな発想力で見ればいいのだ。

こちらはNo.4の作品

ソラリスへ至る」という作品だ。

使われているのは襖(ふすま)だ。

300年後には惑星ソラリスへとワープできるゲートになっているようだ。

そう言われると、そう見えてくるから面白いものだ。

さらに進むとNo.1の作品

この大きな葛籠(つづら)でできたものは「火星の花嫁に捧ぐ」という作品だ。

この葛籠、「長櫃」(ながもち)というそうで、嫁入り道具を入れるのに使われていたものなんだそうだ。

300年後には火星に嫁ぐことを想定している。

赤い天板が「あかんべぇ」をしている云々と書かれてあったが、このパネルに嫁入り道具の目録が浮かんできそうなもので、なんならその赤いパネルが転送装置のようになっていて、星を跨いで嫁そのものを送り届けられるなんてこともできそうに思えてくる。

いやはや、想像が膨らむじゃないか。

そしてその部屋の奥にはNo.3の作品が

「虚空をみつめるカッシーニ」という作品だ。

使われているのは「蓑」と「笠」だ。

300年後には人々が宇宙で迷わないように土星の環にて案山子として突き立てられているそうだ。

ここでは人が羽織るサイズだが、300年後に土星の環で立つ時はいったいどれくらいの大きさなのか知りたいところだ。

空想なので勝手を言うが、南極大陸ぐらい巨大なんじゃないかと思う。

それくらいデカくないと、迷子の目印なんて出来っこないはずだ!

と、迷子常習犯の自分などは力説したい。

 

二階を観ていく

玄関の方に戻るとこんな張り紙を目にする

2階にも作品があります。とのことだ。

2階へと通ずる階段はこちら

通路多くに階段があり、同じような張り紙も貼ってあるので、そこを上っていけばいいのはわかるのだけど「危険」と書かれた赤紙のものもその隣に貼られていたりするからドキッとしてしまう。

これを上がっていくのか…

勾配がきついので、確かに危険な階段だ。

でも、田舎の家でこの手の階段には何度も遭遇しているので、自分などは慣れっこだったりする。

昔はこういう急な階段、多かったよね。

それよりも「こちら側のポールは全て使用禁止です‼」の張り紙のほうが気になる。

折れやすい状態なのか全部さわるなということだ。

こう書かれてあると却ってうっかり触ってしまいそうな気になるから、自分などは怖いと思ってしまう。

二階に上がってさっそくNo.6の作品

階段を上がって右手の次の部屋に置かれていたこちらは「明けの明星を眺める」という作品だ。

見てわかるように金屏風を用いている。結構昔のものだと思われるが、その輝きが劣化している感じが全くしない。

説明書きを見ると、生に喜びを感じて死を分かち合いたがっているような内容だったので、それに沿って屏風の前の細長い箱を見てしまうが、棺桶のようには自分の目には映らなかった。

じゃあ、何に見えたかって?

巨大宇宙船だ。

金星どころか木星にまで行けそうな大きなものだ(この場合、自分たち人間は豆粒サイズの大きさ)。

中には屏風が入っているんだね

これがあっても開閉式の宇宙船のなにか、として見えてくるのだから、自分のイメージ力もまあまあだろう。

その部屋を抜けて左に曲がると廊下

このような廊下があり、ボランティアの方が箒を片手に窓際で作業をしていた。

何をしているのかと言えば、カメムシを獲っているのだ。

実際、窓の方を見るとカメムシがわんさかといて、薬剤の入ったペットボトルの中へ箒で落としていっていた。

この廊下を進むと…

No.10の作品と、その奥にはNo.11の作品が置かれていた

手前の扇風機が横になっているのがNo.10の「アンドロイドは甘美な夢に浸るのか」という作品だ。

300年後の世界にはアンドロイドも居住しているであろうもので、そのアンドロイドたちからすれば昔の扇風機は祖先なんじゃないかと解釈しているようだ。

横になって夢見るアンドロイドの祖先は…

東芝扇風機だ

足の裏(裏面)を覗き込んだらメーカーがわかった。

この頃の東芝はイイね。

日本製好きの自分としては海外に買収されてからはまったく興味がわかなくなってしまったけど。

奥の部屋ではアンドロイドの祖先が現役だった

こちらがNo.11「アンドロイドは果てのない碧を夢見るだろうか」という作品。

これ、動いてます。

羽根を全力で回して、赤ん坊用の人形に向かって風を送り続けてます。

表情は、結構怖い

風を向けられる人形もアンドロイドの祖先と考えると、祖先の子供を熱中症にさせないために体を張る祖先、という、頭がこんがらがるワードが浮かんでしまった。

アンドロイドの祖先たちは人間のパートナーだったのか、それとも奴隷だったのかを考えさせる作品のようなのだけど、自分は電化製品や車などを「相棒」「や「愛機」と呼ぶことが多いので奴隷ではないことは確かだろう。

物にも神様が宿るような考え方(いわゆる「付喪神信仰」)の日本で生まれて育っているので、物は大事にしてしまう。

物持ちもかなりいい方だ(さり気なく自慢だ)。

アンドロイドの祖先の部屋から振り返るとこんな部屋も

屋根裏へと続くこの部屋にはNo.9「月に降り立つ」という作品があった。

囲炉裏の煤(すす)で黒く染まった昔の梯子だ。

300年後ではこんな梯子で月に降り立つのが逆にトレンドになっているかも知れないとのことだが、シンプルに撮っていてカッコいいと思った。

300年後に「映え」なんて言葉が残っているかどうか分からないが、これで月面着陸は映えると思う。

炎上しない程度に自分もやってみたいと思ったほどだ。

再び階段前まで戻り、別の部屋に入るとNo.5の作品があった

「かの闇はどこまでも深く」という作品だ。

もともとは大きな木箱の蓋なんだけど、300年後には映画『2001年宇宙の旅』にも出てきたモノリスのような役割を果たしてくれているんじゃないかとのことだ。

叡智を授けてくれるのか、それとも滅びの予兆なのか、静かに暗くそこに佇んでいるので、不気味な迫力がある。

AIを搭載したら会話ができそうな気もしてくる。

モノリスをカスタマイズしようとするところ、自分はそこまでモノリスにミステリーを抱いていないのかもしれない。

遊び心ばかりが刺激される。

さらに奥の部屋にはこんなかわいい奴らが

最後の二作品であるNo.7とNo.8だ。

右がNo.7の「今様のへんげ、探求の精神『阿』」という作品だ。

左がNo.8の「へんげの霊性、涅槃の『吽』」という作品だ。

「阿吽」の提灯だ。

神社の狛犬が好きな自分としては刺さるものがある。

ミステリアスなモノリスよりもこういった遊び心に溢れたものに着地してくれたほうが自分好みだ。

彼らが何を見、どうして口を噤むのか、想像力を試され、その想像力で遊べてしまう。

300年後だろうと、作品に関する解釈は、観た者の自由であろう。

 

感想

原嶋亮輔さんの「Future Past 2323」、古い道具たちの300年後の変化した姿をテーマに11個も作品が並んでいたので見応えがあった。

そのどれもがね、想像力を膨らませて、ときに暴走させて設定付けられたようなものばかりなので、こちらとしてもその解釈、受け止め方で、思う存分に自由にやらせてもらえた。

おかげでイメージ力、空想力がまた鍛えられた気がしたよ。

あらためて自分って付喪神(つくも)信仰があるんだなとも気付かされたし、そんな自分にはしっくりとくるインスタレーションだった。

帰り際に自分でついた草餅をいただく

杵と臼でついていた餅、あれ、無料で鑑賞客の皆さんに提供していて、自分ももちろんもらった。

それも、自分でついていた草餅の方だ。

ぜんざいにしてもらっていただきます

食べてみると、旨っ!

草(よもぎかな?)の風味がしっかりついていて、それでいてつきたてのやさしく柔らかい食感のコラボが、硬軟でインパクトあって「おっ!」と驚いた。

上手く杵でつけた自信はなかったが、古い杵に神様が宿っていたから、そのおかげかと思う。

もう一つ付け加えるなら、地元の方々のおもてなしの心と愛情だろうか。

300年経っても、そういった心も残っていてほしいものだ。