初心の趣

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「のと鉄道アートステーション」へ最終日に雨の中、見に行った<能登中島駅>

3月11日より二週間、のと鉄道穴水駅から能登中島駅までの各駅で「アートステーション」なるものが開催されていた。

現役の無人駅でアートだ。

アート好きとしては気になっていたので、最終日に足を運んでみた。

まずは、最初に訪れた能登中島駅で目にし、体験したものを記したい。

 

 

能登中島駅へ

沿線人口の減少によって無人駅が増えている「のと鉄道」が、新しい風景を創出するため、終点の穴水駅から能登鹿島駅、西岸駅、能登中島駅までの4駅でアートイベントを開催していた。

のと鉄道アートステーション -ポッポヤ・イン・レジデンス-」である。

開催期間は2023年3月11日(土)~3月26日(日)だった。

自分の中で「のと鉄道」といえば、旧輪島線や旧能登線の廃駅を回ったことで少なからず親しみのある沿線だ。

さらに中島町は自分の祖父母の家があるところで、これまた子供の頃より良く訪れている場所である。

実際に駅周辺へ何度も足を運んでもいるので近辺の過疎化が進んでいることも目の当たりにしている。

いずれここらも廃線、廃駅になるのだろうかと思ったことも多々あるだけに、こうしてアートイベントを起こして新しい風景を作り出そうとしているのを知ると見に行かずにはいられなかった。

あいにく、3月の週末はいろいろと予定が入っていて、自分が行けたのはイベント最終日の3月26日(日)だけだった。

その日は運悪くずっと雨の一日だったのだけど、雨の日のほうがお客さんもきっと少なくて見やすいだろうと考えて出向くのであった。

見に行かないという選択肢は、なかった。

ということで能登中島駅に到着

金沢から向かうと一番近いのがこの能登中島駅になるので、まずはここから見に行くことにした。

なにより祖父母の家のある町だ。

慣れ親しんだものもあるし、駐車場も広いので車で行きやすい。

そう、自分は車で見に行っている。

仮に大勢のお客さんが訪れていたら、ここ以外の駅で駐車できない可能性もある。その際はこの駅から電車に乗っていけばいいや、との考えもあった。

開始時間が10時からで、自分が到着したのもその時刻あたりだったためか、駐車場も空いていた。

こうして到着してみると、階段に見慣れない幟旗が4本立っていた。

アートステーションの旗だ

たしかにイベントは行われているようだった。

能登国際芸術祭のような雰囲気がある。

過疎化が進む町をアートで盛り上げようとする心意気は、いや、奥能登国際芸術祭と同じだ。

能登国際芸術祭では廃駅を活用した作品もいくつかあったしね。

幟旗の背後には矢印も見えたので、それに従って駅舎の中へと入っていった。

パンフや事前に確認したHPによると、ここ能登中島駅では「しでかすなかまたち」というユニットによる『卯釈迦命想館』という作品が展示されているそうだ。

駅の待合室が占いの館のようになっているようである。

しかも日によっては卯釈迦(ウーシャカ)先生が実際にその館にいて、来場者を直接占ってくれる(無料)というのだ。

今回訪れた最終日である3月26日も卯釈迦(ウーシャカ)先生がいる日だった。

自分、占い未経験。

これは占ってもらうしかない。

この日はそれを一番の目的にしていた。

 

作品を見に駅舎へ

駅舎の中へ

駅舎の中に入ってみると、すぐ目の前にこの大きな顔ハメパネルが置かれていた。

昨年、仲代達矢さん役者七十周年記念に能登演劇堂(中島町にある)で公演された「いのちぼうにふろう物語」のものだ。

自分も去年、これを実際に見に行っているので懐かしくなった。

昨年に「いのちぼうにふろう物語」の公演を観に行ったときの記事はこちら

いい芝居だったなぁ。

仲代達矢さんの無名塾と繋がりのある能登演劇堂がこの町にあることから、この能登中島駅には「演劇ロマン駅」という愛称もある。

見上げると無名塾の公演の写真パネル

演劇もアート(芸術)と見なすなら、この駅はすでにアートステーションじゃなかろうか、とも思えてくる。

ちなみに振り返るとこんなものも

同じく駅舎内にはこんな萌えキャラのパネルも置かれていた。

中島町は養殖牡蠣で知られるところなんだけど、こんな萌えキャラまで登場していた。

「中島かき子」というらしい。

牡蠣の殻を頭に装着って… すげぇインパクトあるな…

スカートにしがみついている中島菜みたいなのは「中島菜々子」というそうだ。

なお、自分がこの存在を知ったのは1年ほど前だ。

ほんと、いつから登場してんだろう?

調べてみると開通90周年を迎えた2018年に記念として誕生したらしい。

手に持っている「90」はそういう意味だ。

自分の親(中島町出身)にも聞いたけど、知らなかったよ。

中島町、攻めてるなぁ。

自分の中では、これだけでもうアートステーションの作品に思えたよ。

今回の本当の作品はこちら

張り紙があった。

なんでも卯釈迦(ウーシャカ)先生って世界初(?)の着ぐるみ占い師なんだそうだ。

「怖くないよ、やさしいよ」だそうだ。

この張り紙ではシルエットしか描かれていないけど…

券売所の上ではその姿のイラストもあった

いや… 怖いでしょ。

ますます期待が膨らんでしまう。

駅舎からホームへ

ホームへ出てみると、待合室がいつもと違っていた。

おぉ、あれが『卯釈迦命想館』だ。

遊び心あるその意匠に、むかしからこの駅を知っている自分としては俄に嬉しくなった。

振り返ると駅舎の戸にこんな張り紙も

これによると、占いの館は通常、中を見学できて、置かれている占いグッズで来場者一人で占えるようになっているようだ。

さらに3月25日と26日には「駅ナカ占い」として卯釈迦(ウーシャカ)先生が直接占ってくれるようである。

直接占うのは一日先着10名までとも書かれてあった。

26日最終日、早めにやってきて、良かった…

 

占いの予約へ

占ってもらうには予約をする必要がある。

事前予約はできないので、現地にやってきて直接予約するしかないわけだ。

予約場所ももちろん占いの館だ。

反対側のホームにあるので、跨線橋をわたってそちらに向かうことにした。

こちらが跨線橋

なにか飾り物が施されている。

以前からあったっけ?

「無病息災くす玉」というらしい

能登のお母さんが地域のチラシや包装紙を使って作ったものだそうだ。

やさしくそっと撫でると元気に長生きできるらしい。

長生きしたいのでソフトタッチしてきた

くす玉の上には、このように人形のようなものがくくりつけらているものもあった。

このデザインは「アマビエ」だろうか。

かわいいのでそっちにも触ってしまったじゃないか。

反対側のホームに到着(近くに野球場あるんだね)

占いの館に近づくと、その前にボランティア(おそらく)のスタッフの方がいて、予約を受け付けていた。

先客がいたので30分ほど待たされることになる。

30分か… それなりに長いが、この日は駅のホームに「駅マルシェ わんだらぁず」がオープンしていたので、ホームで食事しながら待つことにした。

そう、能登中島駅にはときどき駅マルシェが来ているのだ。それが出ていると、ホームで軽く食事ができたりもするのだ。

 

ホームで食事しながら待つ

再び駅舎のあるホームに戻ることに。

その駅舎の前で駅マルシェ「わんだらぁず」がやっていた。

こんな

感じで

「わんだらぁず」、アートステーション期間中の土日はほぼ毎週のようにオープンしていたようだ。

この日、オススメされたのは「能登かきガンガン焼き(蒸し牡蠣)」だった。

一つ300円。

ほかにも卯釈迦(ウーシャカ)先生とコラボした期間限定のスープも販売されていた。

スープも飲みたいし、牡蠣も食べたい…

迷う…

迷った末に…

両方頼むことにした

注文してホーム内に設けられたテーブルで待っていると、食堂のように運んでもらえた。

久しぶりの能登かき

ミルキー。

塩とかまぶしていないのに海の潮味も効いて何もつけずにそのままツルンといけてしまった。

久しぶりに食べると、美味いね。

むかし田舎(ここ中島町)から一斗缶に入った牡蠣を送ってもらったり、買ったりしていたのを思い出した。

あの頃は味もわからず馬鹿みたいに食べていたけど、今なら一つでもちゃんと味わえる。

能登牡蠣好きの方は味変を好むそうで、テーブルにタバスコやポン酢、ポッカレモンなんかが置かれてあるのはそのためだ。

さらに上級者は自分で味変用の好みのソース等々を持ってきたりもするらしい。

自分はまだまだ牡蠣初心者なので、今回はひとまずシンプルに素材の味を楽しんでみた。一個しか注文してないしね。

情熱スープもいただく

中身はトマト、人参、玉ねぎ、じゃがいも、ベーコンなんかが小さく刻まれて入っていた。

この日は久しぶりに冬のような寒さに戻っていたので、ちょうどいい食べ物だった。

あったまる。

パンも付いていたのでドリップ

こういう自分勝手な味の楽しみ方は『孤独のグルメ』ぽくって好きだし、ついやってしまう。

なんなら牡蠣にもちょっとつけてみたり

シンプルに楽しんだと記しながら、実は少しだけだが味変も試していたりもしていた。

あまりにも少量しかスープを掛けていないから、あんまり変わった印象はなかったけどね…

結局、牡蠣を口に含んだところにスープを後追いですぐに飲むほうが美味かった。

牡蠣の塩味を情熱スープが中和するように、口の中を落ち着かせてくれるのだ。

長寿らしい

スープのカップの裏にはこのようなデザインも施されていた。

長寿!と言い切れてしまうところが面白い。

これらを飲食しながら、ますます占いが楽しみになってきたのだった。

 

館の中で占ってもらう

食事を済ませてしばらくして、反対側の館があるホームから受付をしてくれた方が自分を呼んでいた。

30分が経ち、いよいよ自分の番が回ってきたのだ。

自分は占いというものを生涯で一度もしてもらったことがないので、これが初めてとなる。

占い、初体験だ。

なんか記念撮影している

待合室を改造した占いの館から変な着ぐるみが出てきた。

変、とは失礼か…

そのピンクの着ぐるみこそが、自分を占ってくれる卯釈迦(ウーシャカ)先生だ。

実物、思った以上にかわいいが、インパクトがすごい。

あらためて跨線橋を渡って待合室の方へ

行ってみると、館の中に通された。

そこには卯釈迦(ウーシャカ)先生と助手の方が一人いた。

いきなり撮影させてもらえた

この決めポーズ、撮られ慣れしている。

なんなら一緒に撮りましょうかと言われたくらいだ(さすがにそれは遠慮した。自分は写りたい側ではない)。

それにしても近くで見ると、なんて愉快なビジュアルなんだ。

顔は猫なのか犬なのか何なのかよくわからない動物のようだけど、愛嬌があることは確かだ。

駅舎の画は少し怖かったが、実物は全然それがない(自分の目には)。

この姿で占うのかと思うと違和感ありすぎだが、その違和感が却って自分には楽しみでしかなかった。

いかにも占い師っぽくないところが、自分には好みだ。

さて、卯釈迦先生の占いは手相だった。

ほかにも色々とできそうな雰囲気があるけど、自分が占ってもらったのは手相だった。

先生の真横に座り、虫眼鏡で手相を見てくれていた。

その着ぐるみ越しに見るの大変じゃないかと心配もしたけど、ちゃんと見えているようだった。

なお、先生はしゃべらないキャラなので、占いの結果はホワイトボードに筆談のように記し、助手の方が読んでいきながら補足も交えていくというスタイルだった。

昨年はドラマ『silent』にハマったけど、silentごっこみたいなことをやっているなと思った。着ぐるみ相手に…(失礼)。

記録のためにホワイトボードも撮らせてもらえる

先生は手相を見ては書き、書いては消してまた手相を見て書く、といったことを繰り返していた。

雰囲気を伝えるために一枚だけ占いの結果を載せてみる。

個人情報にも繋がりかねないけど、まあ良い。

それによると、自分は「やさしいーーーーーー人」なんだとか。

そのせいでときどき言いたいことも言えなかったりするらしい。

いえ、らしいじゃない、当たってます。

自分が優しいかどうか自分ではわからないけど、他人を優先することは多々あります。

自分自身にあまり興味が無いので。写真に写ろうとしないのもその一つかと。

表に出るタイプではなく裏方タイプです。

あと、長生きするらしい。

体力は薄めで、生活の見直し、例えば食事とか筋トレかしたほうがいいそうだけど、大丈夫だろうとのこと。

長生きか… いつか宇宙に行きたいとも思っているから、宇宙旅行が気楽にできるくらいまで生きたいなとの淡い願望はある。長生きできるなら嬉しい限りだ。

体力面で忠告は受けたが、自分はやりたいことがありすぎてショートスリーパー(一日5時間くらいの睡眠)なので、結構当たっている。

疲れも出るのでそろそろショートスリーパーをやめようかなとも考えていたところだ。

ちなみに、マルチにいろいろなことをやるタイプではないとも言われた。一つにパワーを傾けろとのことだ。

いろんなことを自分でやろうとして睡眠時間が削られている今の生活を見直さなきゃならんということだ。

う~む、図星を指された気分だった。

やるな、着ぐるみ! いえ、先生!

そして一番笑ったのは「かなりのエロス」と言われた(書かれた)ことだ。

「え?そうなの?」と聞き返してしまったけど、そうらしい。

なんでもエロ線は創造力、想像力が豊かということにもつながっているそうで、自分はクリエイティブな仕事に向いているらしい。

まじでクリエイティブとのことで、是非、エロス&クリエイティブを形にしてほしいと念を押された。

はんぱないらしい

帰り際にも一度呼び止められて「エロス&クリエイティブを形に」と伝えられたくらいだ。

エロス&クリエイティブ… 子作りでもしろってことだろうか?

最後にチャームももらえる

何種類かある中で、自分にあったものを先生が選んでくれる。

自分はソフトクリームだった。

「溶かすようなエロス&クリエイティブ」を願ってのチョイスだそうだ。

自分、よほどエロスの線が強いんだね。

いやぁ、面白かった!

卯釈迦先生、ありがとうございます!

 

感想

以上、「のと鉄道アートステーション -ポッポヤ・イン・レジデンス-」最終日に能登中島駅で目にし、体験した話である。

卯釈迦先生はかなりインパクトあったけど、ユニークな占いで、その結果にも笑えたので、色んな意味で満足した。牡蠣も情熱スープも美味しかったし。

占い初体験だったけど、こんなにもエンターテイメントになるんだとの発見もあった。

自分のような一般庶民でも占ってもらっているときは主役になれたような気を持てた。

参加できるアートというのは楽しい。

祖父母の家がある、自分にとっては「田舎」である中島町の駅でそれを体験できて嬉しいったらない。

卯釈迦先生には感謝である。

では次の駅へ

のと鉄道アートステーションは4駅で行われているので、次の西岸駅へ向かうことにする。

占いの受付をしてくれた方によると、電車でももちろん、駐車場もそれなりにあるから車でも行けるだろうと教えてもらえた。

電車で行くことも考えたけど、車で来ていたので車で向かうことにした。

次回は、その西岸駅で目にしたアートを紹介したい。