富山県射水市新湊地区にある内川が、日本のベニスと呼ばれている。
川に船が停泊していて独特の趣があるようだ。
先日知り合った方からそのことを教わったので、一度写真を撮りに行ってきた。
日本のベニスと呼ばれる新湊の内川
5月に少しお世話になった不動産屋さんの方の出身地が富山県射水市新湊というところで、川に船が停泊している珍しいところだという話を聞かせてもらった。
永遠のカメラ初心者ながら写真を撮りに行きたくなったので、先日、石川県を飛び出し足を運んでみることにした。
さっそく地図
かつて「新湊市」という市が存在していたんだけど、2005年に射水郡小杉町、大門町、大島町、下村と合併して「射水市」となっている。
新湊市という名称は残らなかったようだ。
石川県金沢市からだと、だいたい50~60kmのところにある。
同じ石川県内の羽咋市なんかが金沢から約50kmくらいなので、結構近い。
石川県七尾市に行くより近いのだ。
自分は国道8号線を使って向かったのだけど、1時間くらいで到着できた。
目的地が町の中の川であるので、どこに車を停めるべきかの駐車場問題が懸念であったが、実際に向かってみると停めれる場所が川のすぐ近くにあった。
自分が停めた場所
ここ、山王町公園という小さな公園なんだけど、看板にもあるように「内川散策のための観光客専用駐車場」になっていた。
地域を上げて内川散策を推しているのがわかる。
ついでに「日本のベニス内川」と記してもあることから、「日本のベニス」という喩えは射水市も公認、もしかしたら町おこしのため自らそう呼んでいるのかもしれない。
なんにせよ、この駐車場は親切だ。ほんと助かる。
駐車場を出るともう橋だ
内川は橋が何本もかかっていて、それら橋も観光スポットだということを教えてもらっていたので、こうしてすぐに一本目にたどり着けて幸先よく感じた。
なんか地図があった
駐車場にウォーキングを勧める「歴史の道コース」と記された看板があった。
この地図によれば、ここ山王町公園から見える橋は神楽橋というようだ。
神楽橋だ
ステンドグラスで装飾された橋だ。
寄ってみる
こういった橋はなかなか見かけない。
石川県内ではあるだろうか?
少なくとも自分は目にしたことがない。
さらに寄ってみる
なんだろうか、この貝細工のような趣は。
なんでも射水市出身の工芸作家・大友二三彌氏によって作られたステンドグラスなんだとか。
射水市串田(新湊より南の方にある)には大友二三彌ステンドグラス記念館というものもあるそうだ。
神楽橋から望む上流
う~む、さっそく日本じゃないような景色だ。
ほんとうに川に船が停泊している。
この日本では河川法というものがあって、河川内に恒常的に船舶を係留するには河川管理者からの許可が必要なんだけど、治水上の問題や、町の人の川の自由使用の妨げや、景観などといった問題から基本的に許可が降りない。
でもこの新湊の内川では逆に「景観のため」という理由で許可を出しているのだそうだ。
河川法なんてものができる以前より、川に船が停まっている景色が内川の日常だったのではないかと想像してしまう。
なお、神楽橋のすぐ近くには「川の駅」もある
道の駅ではなく「川の駅」だ。
こんなの初めてみた。
全国的に増えつつあるそうなんだけど、石川県にはない。
この川の駅は後から立ち寄っているので、後ほど記したい。
まずは下流へと下ってみることにした。
神楽橋から下流を望む
下流にもまだまだ橋がかかっている。
内川を散策しながら、内川の橋を一つ一つチェックしていったので、以下にまとめたい。
神楽橋から内川を散策する
神楽橋を下りてみた
そうして下流(海の方)に向かって歩きだす。
川沿いを歩いてみると、停泊している船がより近い。
一艘だけじゃなく、何艘も停まっているから確かにベニス(ヴェネチア)っぽい感じはする。
でもここはイタリアではなく、日本の富山県の新湊の内川だ。
船や漁具は日本っぽい
なんだろうか、このホッとする感じ。
イタリアっぽい船が停まっていなくて安心する自分がいた。
ベンチだ
そんな内川の船たちをバックに座りながら写真を撮ることもできるし、カップルでいちゃつくこともできよう。
この日は気温が猛暑日に近く、おまけにこのとき真っ昼間だったので、誰もいませんでしたが…
橋の下から見上げるとステンドグラスがよりきれい
振り返って神楽橋を見上げると光がよく通るせいか、よりキレイに見えた。
橋の下には船(監視船だった)も停まっていたし、橋の上から見るより川の色んな表情が見えてくる。
川沿いの家々の中にこんなお店が
「おきがえ処KIPPO」というお店があった。
なんでもレンタル着物ができるそうだ。
着物を着て内川を散策できるのである。
後で記すが、実際に着物で内川を散策している集団もいた。
中新橋へ
次の橋が見えてきた
木製だろうか?
なんだか古そうな橋だ。
「中新橋」という名称だった
なんでも北前船をイメージしているそうで、アーチが特徴的な橋なんだとか。
歩行者専用なので車は通ることが出来ない。
神楽橋は普通に車が通っていた。
う~む、たしかに船っぽい
いまでは木製の船ってあまり見かけないのでイメージしづらいかもしれないけど、絵で見る北前船はこんな感じだった。
その欄干からの景色
見事に川に船が停泊している様を拝めるが、その船たちも今どきなものばかりで、木製のものはさすがにない。
橋の下に降りてみた
船がね、どれも磨かれているのかキレイなんだよね。
現役で漁に使われているものなのか、それとも展示用なのか気になるところだ。
気になるといえば…
この建物も気になった
この前で記念撮影をしている観光客がいた。
「番屋カフェ」というところで、映画のロケ地にもなったところだそうだ。
この内川を舞台にした『人生の約束』という映画があるそうで、そこに登場しているという。
ちなみに『人生の約束』という映画、主演は竹野内豊さん。江口洋介さんに松坂桃李くん、優香さんや小池栄子さん、西田敏行さんやビートたけしさんまで出演しているというから豪華だ。
こちらが看板
こちらはロケ地巡りの看板
なんか撮影していた
後で知ったけど地元の地域おこしだったか、観光推進課だったかが学生さんたちを使って写真撮影していた。
学生さんたち着物を着ていたし、地域公共交通「べいぐるん」の電動カート「べいかーと」や「べいとらいく」で移動していた。
新湊ではこんな乗り物を借りられるのだ。
徒歩で移動していた自分としては屋根もあるしラクそうだし、羨ましくなった。
中の橋へ
さらに歩くと次の橋
次は「中の橋」という橋だ。
結構歴史のある橋らしい。
なんか、絵が見える
欄干に絵がはめ込まれているのが見えた。
近づいてみる
だいぶデフォルメされた仏っぽい絵が描かれている。
なんでもこれ、射水市(新湊)出身の画僧である牧宥恵さんという方が描いたものなんだとか。
何枚か
ある
欄干の外側にも描かれているので、それらは船に乗って川を渡っていると、より見えやすいのかもしれない。
ちなみにこちらが欄干からの景色
右手、近くに休憩所が見えた。
真夏日に近い真っ昼間の炎天下を歩いていたため、橋を数本通過しただけで結構に疲れた。
そんなもので、その休憩所にも立ち寄った。
こちらがその休憩所
無料休憩所とある。
勝手に休憩していいだけでなく、10台以上停めれそうな駐車場もあるのだ。
もちろん、そちらも無料。内川散策用の駐車場の一つだと思われる。
公衆トイレもあるので小さな道の駅みたいなところだ。
歩き疲れたのでひとまず休憩
木製の椅子やテーブルが設けられていたので、休憩。
ここに座ると目の前が川だ。
椅子に座りながら内川を望むというのも乙だ。
何より、ここ、東屋のように屋根がついているから日陰になっていて、おまけに風も良く通っていたので、この炎天下でもここの椅子の上だけはものすごく涼しく感じた。
天然クーラーのようで気持ちいいったらなかった。
休憩所から見える内川の景色
眺めていたら何やら船が川を下流に向かって進んでいた。
「万葉丸」と書かれてあった。
何でも海王丸パークから出ている通常クルーズ「内川遊覧&12橋巡り」の船のようだ。
海王丸パークから出てこの内川の橋々の下を潜っていけるクルーズがあるのだ。
なんかラクそうだ
うらやましい。そして気持ちよさそうだ。
この船、内川を抜けてまた海王丸パークへと戻っていくそうだ。
いつか乗ってみたくなった。
「内川さんぽまっぷ」なるものもあった
休憩所にはこのように内川のマップも置かれていた。
この休憩所が内川散策用にあるのがこれからもよくわかる。
この日の自分は… 散策だ。
歩いて内川を見て撮っていくのだ。
なお、これによると内川の橋は11本あるようだ。
本当はもっとあるようなのだけど、さんぽまっぷエリア内に限定すると11本のようだ。これを目にして、とりあえずこの日はこの11本の橋をしっかり撮ってこようと決め込むのだった。
無料休憩所から再び歩き出す
歩きだすともう次の橋が見えている。
橋と橋の間ってそんなに離れていない。
と、その前に、何だこの建物は
どこから見ても古い民家にしか見えないこの建物であるが、これ、ホテルだったりする。
左端にも「HOTEL]と掲げてあるし、ウェルカムボードにもホテルと書かれてあった。
「水辺の民家ホテル」というところなんだとか。
その名前の通り、民家を改装してホテルにしたものだろう。
入口が開いていたので中をちょっと覗いてみると、中は民家なんだけどなかなかおしゃれで雰囲気のある受付が見えた。
外から見る限り田舎のばあちゃんの家に泊まりに来たような趣があるのかなと、勝手に想像してしまう。
いつか泊まりに来たくなった。
お好み焼き屋さんもある
「富乃屋」という名のお店だ。
立ち寄って食べてみたくもなったが、あいにく先に昼ごはんで白エビの天丼を食べてしまっていて、さらに白エビソフトも食べているから、お腹は満たされていたので今回はスルーした。
(白エビソフトを食べた記事は→こちら)
水門がまたいい
お好み焼き屋のあたりで川の対岸に目を向けると水門も見えた。
この水門の堅牢な感じが自分にはなぜだか惹かれるものがある。
ということで隣の道路と一緒に撮ってしまった。
その上で入り乱れている電線もなんかいい。
うまく撮れなかったけど、内川の町並み(民家)を表せているからか、この景色が妙に気に入ってしまった。
新西橋へ
次の橋が目の前に
「新西橋」だ。
金属造形作家・蓮田修吾郎氏がデザインした橋なんだそうで、欄干が金属でできている。
なんかモダンだ
遠くから見ていたら茶色の金属がサビに見えて、古い橋なのかと思っていたが「平成五年3月竣工」と書かれてあったので、どちらかというとまだまだ新しい橋だった。
この橋からの景色がまた良いとも書かれてあったが…
う~む、たしかにいい
こちらは上流に向かって撮っている。
高さと、次の橋との距離がちょうどいいのか、周りの住宅もすんなり収まる構図で撮れた。
天気も良かったし、遠くの雲が水面に映る様子もキレイだった。
橋を降りてもなんかいい
個人的に町の街灯が結構好きで、こういうのを見るとついつい何も考えずに撮ってしまう。
何も考えずに撮ったら水面にやっぱり雲が映っていて、自然と「いいところだな」と口にしていた。
町や川が落ち着いて見えるところも気に入った。
比べて下流側を撮影
逆に下流側(海側)に目を向けてみるとちょっと雑多な感じがあった。
庶民の香りがする。
こうして撮るとなんか下町っぽさもでる
この道を走って下るだけで映画のワンシーンに使えるんじゃないかと思えるのは自分だだけだろうか。
少し角度を変えてみよう
対岸の方から撮るとこう見える。
川の流れから右折する位置に次の橋が見える。
それまでの橋と比べて架かっている方角が違うからこれで最後のようにも思えてしまうが、まだ最後ではない。
まあ、川が枝分かれしていて右に曲がるともう海に通じるので、ある意味では内川の最後の橋のように見えても仕方がない。
その橋が「湊橋」だ。
湊橋へ
この右手に見える橋が「湊橋」だ
写真奥には次の橋も見えているけど、まずは湊橋だ。
大きく彫られた「内川」の文字
ここも内川の橋なんだと誇示しているようである。
そして反対側には「湊橋」の文字
力の入った堂々たる文字じゃないか。
では渡ってみよう
渡らないと内川沿いを進めないのだから渡るしかない。
この橋、なんでも江戸時代の大火で1150戸が焼けてたくさん犠牲者が出たことから架けられた橋なんだとか。
これだけでは当時の状況がまったく見えてこなくて、この橋の役割みたいなものもわからない。わからないので勝手に想像してみると、この橋がなかったときは消火にも救出にも行けなかったと勝手に思い込む。
ちなみに海側を望むともう一本橋が見える
「奈古の浦大橋」と呼ばれる橋だろう。
こちらは海にあって内川沿いではないので、足を運ばずこうして眺めるだけにした。
なお、湊橋を進まないと内川沿いを進めないと記したが、対岸なら歩いて進める。
対岸に目を向ける
ちょうど海鳥が飛んでいた。
フェンス(堤防)の向こうがちゃんと道になっているので、歩いていけるのだが、その道を進もうとするなら新西橋までいったん戻って、その橋を渡ってあっち側に行かなくてはならない。
なかなか大変だ。
大変だけど、なんどもここらへんを行ったり来たりして実際歩いてみた。
すると…
フェンスの裏にアートが飾ってあった
「内川アート」というらしい。
写真に写っている4枚だけではない。まだまだ絵が並んでいるのだ。
こんな感じに
すべての絵を写真で撮ってみたけど、それらを羅列すると40枚以上になるので今回は割愛させて頂く。
作者も何人かいて、一人で数作品展示している人もいる。
絵と湊橋を一緒に収める
この内川アートのあるフェンスがどういう位置にあるのかこれでわかるだろう。
自分がこのあたりを行ったり来たりしているのも、おそらくわかるだろう。
西橋へ
再び湊橋の方へ戻ろう。
そこから次の橋に向かおうとすると、
川で小魚が泳いでいるのが見えた
寄ってみる
うじゃうじゃいた。
そうして自分が近づくと、影が動くのか、気配を感じるのか、川の深いところへ群れで逃げていくのだ。
この群れを追いかけ逃げられながら進んでいくと…
次の橋が見えてくる
「西橋」だ。こんどは石造りの橋だ。
脇に祠があるので…
まずは拝んでおいた
よくわからないけど、合掌だ。
橋の写真を撮る許可を仏に請うた。
そうして撮る
こうしてみると、なかなか年季の入った橋だ。
昭和三十三年12月に竣工と書かれてあったので、なかなか古い。
内川に架かる橋の中でも歴史のある橋らしい。
個人的には三叉槍のような街灯も時代を感じさせて味があって好みである。
遠くから見ると地味な橋かも知れないが、派手さはなくてもその味わいは深い。
橋の上から上流方向を望む
家と川との距離が近い。
そこだけ見るとベニスっぽい気がしてくる。
ちなみに振り返って下流方向を見ると…
なんだか穏やか
海も近いこともあって川の流れは穏やかに見えた。
このあたりになると停泊している船は見かけなかったものの、左右の町並み、軒並みとあわせて川の街っぽい情緒が感じられてくる。
次の橋だろうか、それもももう見えている。
藤見橋へ
こっち側から行ってみよう
西橋を渡って対岸の方から次の橋へと向かおうとしたら、なんか民家の敷地内のような路地だった。
人の家の庭の一部に思えて、進んでいいのか悩ましかった。
進んでいきましたけどね
道の途中にテントみたいなものまで見えるし、やはり人の家の庭にしか見えない。
あ、アジサイ
アジサイなんかも植えられていて、これもまた個人の庭感がすんごく出ていた。
さらに進むと橋のようなものが見えてくる
でもこれ、橋ではなかった。
川に架かっているので渡れるのだけど、その上には東屋のようなものも設置されていてどちらかという休憩所のように見えた。
階段もまっすぐ上がるタイプじゃないしね
橋っぽくないのだ。
こんなものだから人は渡れても車は無理だ。
渡ってみてわかったけど、ここポケットパークだった。
内川親水ポケットパークというらしい
宝くじの普及宣伝事業として平成18年3月に整備されたものなんだとか。
東屋にはベンチもあったし、休憩もできた。
ポケットパークから
まっぷに記されていた橋の中では下流方向最後となる次の橋が近い距離で見える。
散策マップに記された橋をとりあえず回ろうとしていたので、下流方向ではそこをゴールとしていた。
ここまででだいぶ歩き、結構に疲れていたけど、あと少しだ。
そしてすぐに到着
疲れていたからか写真が斜めになってしまいましたが…
この欄干に車輪のようなデザインが施されているのが「藤見橋」だ。
なにやらモニュメントが
藤見橋というだけあって、藤がデザインされたものだ。
まだ新しいのかきれいだった。
他にはこんなモニュメントも
これ、鈷鈴(これい)なんだとか。
新湊には新湊曳山祭というのが10月1日に行われるんだけど、古新町の曳山の標識がこれなんだそうだ。
反対側にはモスラが…
いえ、蝶のモニュメントが。
こちらは長徳寺の曳山の標識なんだそうだ。
2基ともここを通るってことだろうか? 映画も曳山祭りが題材になっているし、ここのまつりそのものに興味が湧いてきた。
下流最後の橋が祭を示唆しているデザインなのだから「祭にも来なさい」と言われているようにも感じた。
後編へ
以上、前編である。
神楽橋から上流の橋ももちろん撮っているが、これだけで7000字近く使ってしまったので、続きは<後編>に記したい。
後編では川の駅で出会ったボランティアの方に案内してもらってもいる。