初心の趣

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「奥能登国際芸術祭2020+」をマイペースに回る第四日目その5(デイヴィッド・スプリグス「第一波」)

10月4日に奥能登国際芸術祭2020+へ4回目の鑑賞旅に行ってきた。

その日に目にした作品の紹介、その5だ。

今回はデイヴィッド・スプリグス氏の「第一波」を取り上げたい。

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蛸島駅近くの正院エリア

今回紹介するNo.19「第一波」は正院エリアに数えられる。

でも、その場所は旧蛸島駅の近くにあり、蛸島駅にて展示されている作品であるNo.18や、同じく蛸島エリアに数えられるNo.17の作品と駐車場を共有している。

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駐車場近辺から撮影した地図看板

どう見ても旧蛸島駅にあるNo.18のほうが正院よりに位置していると思うのだけど、これはどういことなのかとずっと不思議だった。

No.19の作品のある旧漁具倉庫は奥能登国際芸術祭2017でもウー・ジーツォンさん&チェン・シューチャンさんの「Passing」という作品の展示場所であったので、4年前くらいから謎だったのだ。

謎だと思いながら何もせずにいて、今回やっぱり不思議に思ったのでちょっと調べてみたら、旧蛸島駅の住所って「珠洲市正院町」なんだね。

合点がいった。

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地図に従って歩いていると倉庫が見えてきた

この道をさらに進むと、まん防中の9月から公開されていたNo.18「Something Else is Possible/なにか他にできる」がある。

9月に見に行っているので、このあたりに来るのも約1ヶ月ぶりで、自分としてももう慣れた道である。

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入口が開いていた

9月5日に最初に見に行ったときは閉まっていて「作品公開休止中」と貼り出されていたので、開いているだけで嬉しいものだ。

2017の「Passing」という作品のときも入り口がここだったので懐かしくもあった。

倉庫内はかなり暗くて撮影に苦労したのもよく覚えている。

 

19番 デイヴィッド・スプリグス「第一波」

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19番だ

作者のデイヴィッド・スプリグスさんはイギリスのマンチェスター出身で現在カナダに移住して活動を続けている方だ。

大規模な独自の三次元のはかなげなインスタレーション作品で知られるそうだ。

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受付は入口入ってすぐ

フラッシュ禁止と書かれてあるし、その隣には足元注意の案内も。

これらのことからもわかるように倉庫内は相当に暗いのだ。

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受付を過ぎるともうこの暗さ

この「闇」がもう一つの作品に思えてくるくらい、暗い。

自分はやや鳥目(夜盲症)っぽいところがあるので、足元の明かりくらいでは歩行に少し不安があった。

実際に、何かに蹴躓いてしまっている。

蹴躓いた先に目にしたものが…

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これだ

暗い倉庫内に赤く儚げに浮かぶ巨大な波だ。

浮かんでいるように見えるのは吊るされた大きなフィルムに描かれているからだ。

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しかも何層にも

20層くらいはあるんじゃないだろうか。

平面の画のようでボリュームのある作品なのである。

これら、一枚一枚手描きらしい。

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そんなもので角度を変えると見え方も変わる

少し斜めから撮影。

正面から見ると昔のシューティングゲーム沙羅曼蛇』の炎の演出のように2Dの印象があったが、こうして角度をつけると、サーファーが大きな波の下をくぐっているような3Dの迫力がある。

角度がさらに変わると表情もまたさらに変化してくるので、写真を撮っていて面白い。

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左斜から見ると別のものに見える

巨大な手の指がデコピンをしようとしているように見えた。

赤いので、溶岩から現れた手だ。

溶岩からデコピンは… 強烈そうですな。

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後ろからも見れる

後方よりやや角度をつけて見ると、ゴジラなみの巨大怪獣が海、またはマグマからやって来たように見える。

もしくは鳳凰の羽ばたきみたいだ。

これ、見る人によって色んなものに見えてくるんじゃないだろうか。

 

感想

ガイドブックによると、作者には「側面や他の視点から作品を見れば形の認知はゆらぎ、『見る』ことの不確実性と能動性を感得する」との狙いがあるようで、自分も見事にそれに倣って角度を変えて観、「波」という認知を超えた別のなにかとして捉えることが出来た。

作者がこのようにいろんな見方を予め想定して許容してくれているのは、見る側としては気が楽になる。

十人十色の捉え方をも許容してくれているようで、好みである。

まあ、そう思うのもまた勝手な解釈というもので、どこまでいっても自分の思い込みである可能性もあるが、その可能性が作品の魅力を広げる可能性でもあるということも信じたい。

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他の視点から見ることを許されているとはいえ、水平に撮りたいものだ

自分としては水平に撮っているつもりが、地面から見て傾いている写真が何枚もあった。

大きな作品だけに遠くから撮ると誤魔化しが効かない。

写真を撮るという点に関して、このヘタさも許容してほしいけど…

とりあえず自分としては反省だ。