廃駅よりも道の駅?
廃駅の旅、20回目だ。
九十九湾近くの駅
のと鉄道の廃線の旧駅をめぐる個人的な旅こと「廃駅の旅」も20回目を迎える。
のんびりとやっているつもりだったが、早20回目である。
コロナ禍せいで祭りやイベントが今年も次々中止になっていくので、誰もいない旧駅についつい足を向けてしまうからだと思う。
そんな節目になりそうな20回目に訪れたのは旧能登線の「九十九湾小木駅」だ。
20回目だけど、99(ナインティナイン)なところだ。
場所は、能登町市之瀬というところにある。
駅名に「小木」という地名が入っているのに「小木」になく、その隣の「市之瀬」にあるのだから色々とちぐはぐとしている。
こんな場所にある
地図で見るとわかるように湾が近くにある。
そこが九十九(つくも)湾と呼ばれているところだ。
その九十九湾の海をもう少し南下すると能登小木港があるので、この辺りの湾や港に一番近い駅だったと考えると「九十九湾小木駅」なんてちぐはぐな駅名もなんとなくだが合点がいくような気がしないでもない。
その行き方としてはやはり前回の縄文真脇駅と同じように県道35号線を使うことになる。
ただし、小木を経由するとけっこう迷子になりやすいので、というか自分はしばらく迷子になってしまったので、「小木高瀬口」という交差点で左折し、少し山の方に入っていくルートを取るほうが行きやすいかと思われる。
そのうちバス停が見えてくる
九十九湾というバス停があらわれる。
廃駅の近くにはその駅名と似たような名前のバス停があるもので、今回もその例にもれなかった。
車が駐車しているところ、この辺りはもう旧駅の敷地内なのである。
ちなみにバス停の待合所はウッドハウス調
窓には手作りだと思われる紙製の花飾りのようなものも吊るされていたので、町の人達に親しまれているところなのかなと察する。
近寄って撮る
上手いものだし、キレイなもんだなと感心。
イメージは紫陽花だろうか?
こういうふうに自分たちの手で自分たちの住む町の公共施設を華やかにしようとする心意気には共感するものがある。
駅舎だけが残る廃駅
旧九十九湾小木駅は国鉄時代は「能登小木駅」という名前だったそうだ。
急行が停まる駅なので、それなりに大きな、または重要な駅の一つだったようで、敷地内には駅舎もあった。
その駅舎が今も残っていて、すぐ目につく。
オレンジの屋根のものがそれだ
どこかの時計台みたいな雰囲気を醸しているのでわかりやすい。
時計は2つ付いていた
一つは5時5分、もう一つは11時42分を指していた。
どっちが正解なんだよと思ってしまうが、自分がここにやってきたのは11時少し前であったのでどちらも正しくない。
おそらく両方止まっているのだろう。
正面から見るとこうなっている
九十九湾小木駅サイトハウスと看板がかかっているのでサイトハウスというものなのだろうけど、建築にあまり詳しくない自分にはサイトハウスがどういうものなのかいまいちわからなかった。
建物そのものは現在は集会場として再利用されているようだ。
下市之瀬集会場の看板も
後付だと思われる色違いの看板もこのように掲げてあった。
九十九で小木で市之瀬と、この看板たちを見てもここの地名で混乱させてくる。
なお、入り口の鍵がかかっていたので、自分が訪れたこの日は中に入ることはできなかった。
裏側に回ると駅の名残
駅で見られる倉庫やホームの跡、線路跡があった。
ただ、ホームそのもの、線路そのものが残っているわけではなかった。
2007年くらいまではプラットホームも残っていたみたいなのだけど、いまでは撤去されたようだ。
ホームの名残
鉄柵発見。
どの部分だろうか? 線路を横断する通路のところだろうか?
ホームそのものがないならないで、こうして名残から色々と想像できるので、空想好きとしては結構楽しめる。
こっちの方(倉庫とは反対側)を向いても…
見事になにもない。
距離もあるし、なんだったらここで50メートル走ができるんじゃないかと思えるくらいだ。
端まで行ってみる
草が茂っていたのでそれを避けるつもりで飛ぶように走って端の方まで行ってみた。
工事途中みたいな景色だけど、ここにも名残発見。
跨道橋の跡と思われるものが残っていた。
ちなみにここ、なかなか高いところにあるので、端から下を見下ろそうとするとそれなりに危ない。
高所恐怖症の人にはオススメできない。
ということで下から撮影
線路が走っていたであろう橋の、その足だけが残っている。
その奥の土地が整備されているので、そのうち何か新しい建物が建つのかも知れない。
その際、もしかしたらこの足も撤去されるのではないかと、そんな予感もする。
この足を再利用した新しい建物づくり… なんてことも想像してみるけど、自分の頭ではボルダリング施設くらいしか浮かばなかった。
我ながらイメージするものが運動系ばかりだ。
最近、運動に飢えているのだろうか?
近くにイカの駅
ホームなどが撤去されて少し寂しい九十九湾小木駅であるが、この近くには昨年新たに観光交流施設が誕生している。
「イカの駅 つくモール」だ。
いわゆる道の駅ながら、道の駅ではなく「イカの駅」と名乗っているところがツボだ。
小木がイカ漁で知られるところで、その烏賊を全面に出した観光施設が2020年4月に誕生しているのである。
以前より一度足を運んでみたいと思っていたので、この機に立ち寄ってみた。
地図
こんなところにある。
同じく九十九湾周辺だ。
廃駅から歩いていくことだって可能な距離にある。
こちらが「つくモール」
足を運んだのがGW中だったので、人がかなり多かった。
駐車場はほぼ満車。
コロナなんか関係ないって勢いだった。
巨大なイカのモニュメントあり
コロナ対策の地方創生臨時交付金が使用されて作られたとかで全国や世界のニュースになって賛否を呼んでいるようだけど、お子さんたちはお構いなしに遊んでいた。
元気ですな。
お子さんたちが元気なのはいいことだ。
口から中に入れる
トンネルのようになっていて、そこから中に入っていける仕組みになっている。
気分としては食われているようなものだ。
イカアレルギーの人とか敬遠したくなるところだろうが、多くのお子さんたちはそれもお構いなしに潜っていた。
足や背中に乗っかっているキッズたちもいたし、ワンパク全開で傍から見ていて微笑ましかった。
自分も中に入ってどういう作りになっているのか確かめてみたかったけど、この少年少女たちの盛況の中を大人の自分単騎で突入する気にはさすがになれなかった。
なお、このイカ(巨大スルメイカだそうだ)のモニュメント、名前がまだ決まっていないようで、募集していた(5月18日締め切りだった)。
どんなセンスの名前になるか楽しみである。
コロナ禍をぶっ飛ばすような名前になってくれたらと個人的には思う。
遊覧船もあり
九十九湾をまわる遊覧船だ。
この日は時間的に無理であったので、いつか乗ってみたいものである。
まとめ
以上、旧九十九湾小木駅の今の様子を記してみた。
ついでに去年できたイカの駅つくモールにも立ち寄ってみた。
ホームの撤去に見られるように廃駅の方は少しずつその姿を消しつつあるのに対して、新しくできたイカの駅では人の往来も激しく随分と賑わっていたのが印象的だ。
一つのものが去ると新しいものが台頭する、そうやってその土地の経済は循環していくものだと、改めて思い知らされる今回の旅であった。
列車はなくなったが、いまは船が人を乗せている、その変容も興味深い。
ささやかながら自分も九十九湾の経済を回すのに貢献
基本的に酒を飲まないのでご飯と頂いた。
甘酢だけどそのままだとなかなか酸っぱいので、ご飯と掻き込んでちょうど良かった。
その甘酢が田舎(中島町)で食べたような懐かしい味がしたので、能登の方の酢って同じなのだろうかと、ちょっと気になった。
自分、子供の頃はイカもタコも食べれなかったのに今では美味しくいただけるようになっているんだから成長したものだと思う。
九十九湾小木周辺もコロナ禍に負けないよう、今後も経済成長していくことを願う。
ごちそうさまでした。