石川県の能登半島にはクチコという珍味がある。
ときに日本の三大珍味にも数えられるそれを食べてみた。
クチコという珍味を求めて七尾へ
クチコというのはナマコの卵巣のことで、ナマコの口先にあることからそう呼ばれているそうだ。
ウニとカラスミ(またはカラスミとコノワタ)とともに日本の三大珍味に数えられたりする。
そのナマコの卵巣を干したものを干クチコといい、能登半島周辺が主な産地とされている。
そう、この石川県には三大珍味の一つが名物となっているのだ。
でも自分、これまでそのクチコなるものを食べたことがなかった。
年だろうか、いまではすっかりお酒を飲まなくなって、酒の飲み方すら忘れてしまったような自分なので、必然的に酒の肴のようなものも食べなくなってしまっているからであるが、石川県人としてはその味を知らないというのはちょっと恥ずかしく思えてきた(これも年だろうか)。
その珍味を知っておきたいと七尾に行ってきた。
七尾の道の駅へ
道の駅「能登食祭市場」だ。
迎春と書かれた入り口を抜けてすぐ左手に「なまこや」の直営店がある。
その名の通りナマコの製品を扱った会社でありお店だ。
もちろんクチコも扱っている。
手っ取り早くクチコを手に入れるにはこのお店に行くのが一番行きやすかった。
干クチコをいただく
手に入れたものはこちら
今回お店で購入したのは干クチコというものだ。
手のひらサイズのこちらで一つ2700円もする。
ときに日本三大珍味の一つと数えられるだけあってそれなりに高い。
クチコはナマコの卵巣であるが、それを素干しにしたものがこの「干くちこ」だ。
開封へ
逆三角形状のものが入っている。
ナマコの卵巣は細く、それを一本一本細縄にかけて干していく。何本か干すとこのように一つの逆三角形が出来上がるのだ。
食べるときは手で割いて
豪快に贅沢に三角形にかぶりつくという人もいるかも知れないが、通常はこうして手で割いて少しずつ食べていく。
見た目は硬そうに見えるけれど、イカのあたりめなんかと比べると全然柔らかい。
女の人でもわりとラクに割けると思う。
さっそくいただく
食べるときは割いてそのまま行ってもいいし、軽く炙ってから行ってもいいと言われたので、ひとまずは炙らずに行ってみた。
食べてみると海産物の干した香り、いうなれば磯の香りがマイルドに鼻を抜けていく。
その味も、珍味というわりにはマイルドで、生ウニのような癖の強さもあまりない。
実に食べやすい。
どことなくイカのあたりめ(スルメ)に似ている味がした。
次は炙ってみた
七輪を持っていないのでオーブントースターで炙った。
熱を入れると薄っすらと白く変色していった。
こういうところもあたりめとちょっと似ている。
さらに言うと、炙ってからの香りがゲソを炙ったものと似ていたりしたのでちょっと驚いた。
海産物を干して炙るとみんなこんな香りになるのだろうか?
ウィスキー仕込みの梅酒と頂く
どう見ても酒の肴なのでお酒と一緒にやってみることにした。
ちょうど靴屋の「のさか」でもらったウィスキー仕込みの梅酒があった(おみくじでもらえた)ので合わせてみることにしたが、自分、お酒を飲むのは随分と久しぶりである。
(靴の「のさか」についての記事は→こちら)
では、いただきます
炙ってみると、香り同様にその味もさらにあたりめのようになる。
ただ、あたりめのような独特のイカ臭さのようなものはないので、味わいとしてはすごく上品だ。
上品だけに珍味という感じがあまりしない。
それはおそらく珍味=ゲテモノ系の癖の強さを想像していたからであるからだろうが、いい意味で裏切られた感じである。
炙ったおかげでサクサクさも増して、スナック菓子のようにバクバクと食べてしまう。
噛んでも固くもない。
それなりに値段が高いものなのに、次々と食べてしまえるから、さて困った。
それくらい食べやすいのである。珍味なのに…
梅酒も一緒に
梅酒の製造元は富山にある若鶴酒造というところだ。
飲んでみると糖の絡みがそこそこでしつこくなく、梅のくどさもあまりない。
ロックでやってみたがさらりと行けた。
アルコールの熱さはじんわりと後追いでやってくる。
クチコとの相性は… まあまあだろうか。
梅という果実の香りがあるので、磯の香りを中和できそうな日本酒のほうが良かったかもしれない。
ちなみにウィスキー仕込みなので梅酒なのにアルコール分が24度もあった。
サラリと飲んで後からじんわり来るな、なんて余裕こいていたら10分後には酔が襲ってきたので飲む際はご注意いただきたい。
かなり久しぶりにお酒を飲んだ自分には、ちょっとの量でも病人のようになるくらいきついお酒であった。
美味しかったけど、ギブアップ。
感想
初めてのクチコ、ということで干くちこを食べてみたが、その味はあたりめをより上品にしたようなものであった。
日本の三大珍味に数えられるけど、癖が少ないので食べやすく、旨いというより、美味しいという表現が似合うものだと自分には思えた。
自分は酒をあまり飲めないので、お酒の肴系のものは基本的にご飯と一緒に行きたいところだけど、この炙ったものはご飯とはあまり合いそうになく、やっぱりお酒、特に日本酒が欲しくなったものである。
尖端がなんか可愛い
今回は少しずつ食べてみたが、いつか贅沢に三角形をまるごと七輪で炙ってまるごとかぶりつきながら、水のように飲みやすい日本酒あたり(例えば天狗舞の山廃純米大吟醸とか)でやってみたいと思う。
また干クチコにもランクがあり、さらに高い赤なまこの干クチコというものもあるようなので、できればそういうのも試してみたくなった。
なんにせよ石川県人としてクチコの味をそれなりに知れてよかったと思う。
ごちそうさまでした。うまかったです。