穴水町前波の廃駅を巡っていたとき、道中で神社を見つけた。
諸橋稲荷神社(神目伊豆岐比古神社)というところだ。
ふらっと立ち寄ってみると古い狛犬がいたので思わず撮ってしまった。
旧前波駅へ向かう途中で見つけた神社
旧前波駅への道順を記した際、目印の一つとした神社があった。
こんな写真で紹介している
小さな橋を渡ってすぐ左折したところにある神社がそれだ。
この写真でも何やら灯籠が見えて、石碑のようなものも見えていると思う。
境内にそういうものも置かれていた。
曲がると見えてくる鳥居と石柱
柱には「諸橋稲荷神社」と書かれてある。
こんなでかい柱がある神社となると古い狛犬でもいるんじゃないかと気になって、ついふらっと立ち寄ってしまった、もとい参拝しに行ったのであった。
一応、地図も
地図にも書かれてあるけれど、この諸橋稲荷神社、別名がある。
神目伊豆岐比古神社とも言うそうである。
鳥居の額束にその名前が記されている
御祭神が神目伊豆伎比古神と稲荷明神、さらに大山咋命だそうで、なんでも延喜式能登国鳳至郡9座の一つである神目伊豆伎比古神社にもあてられているんだとか。
諸橋六郷の惣社だそうで六郷大社とも称されていたらしく額束にも「六合大社」(「郷」の字が「合」になっているが)とも記されている。
鳥居全体
ちょっと引いて鳥居全体を拝む。
石造りのものの裏に朱色の木製の鳥居も隠れている。
そうして自分はその朱色の方の鳥居の写真を撮るのを忘れてしまった。失態だ。
気を取り直そう。一礼し、鳥居をくぐってみると、写真でもわかるように拝殿はすぐ正面にある。
途中に手水舎もある
以前からそうなのか、コロナのせいなのか水は出ていなかった。
最近そういう手水舎が多くて少しさみしい。
鳥居をくぐって右方向には忠魂碑も
拝殿と比較するとわかるように結構大きな石碑なので夜中にこの前まで来たらその迫力から霊的な何かを感じ取ってしまいそうであった。
この迫力
さて、これらの写真でも確認できると思われるが、狛犬が拝殿前にいる。
遠くからでもなにか変わった形をしているなとわかったので、狛犬写真家を目指そうかと目論む自分としてはそそられるものがあったのだった。
尻上げの構え獅子をダイヤモンド富士のように
あらためて拝殿前に到着
狛犬は拝殿正面にて左右一対になっていた。
お互い正面を向き合っている。
この位置からだと2体の側面が見えることになるが、そのシルエットが少し変わっている。
一般的によく見られる狛犬はお座りをしているタイプ物なのに対し、こちらはお尻が上がっているのだ。
では一体ずつ見ていこう
まずは拝殿を正面にして右側のものから。
口を閉じた吽形で、その格好は見事に尻を持ち上げている。
こういう腰を上げて今にも飛びかかりそうなタイプを「構え獅子型」と言うようで、人によっては「出雲」型とも呼ばれている。
出雲と呼ぶ人は比べて座っているタイプを「丹後」型と呼ぶ。
ただ、顔の特徴や使われている石(来待石というらしい)から「出雲」型と呼ぶ場合もあって、そのカテゴリー分けだと、仮に座っていても顔の特徴や来待石からできているということで「出雲」型と呼ぶようなので、結構混乱してしまう。
顔が愛らしい
目がつり上がっていて耳は垂れている。
この顔の特徴は「出雲」型だ。
出雲型は出雲地方だけでなく北前船に乗って九州から北海道にかけて日本海側に広がったようなので、こうして石川県で見られても不思議ではないみたいだ。
来待石は凝灰質砂岩らしく、加工しやすいけど脆いのが特徴で、この子の顔を見ても表面は劣化している。
自分としてはこの劣化が「味」なんですけどね。
劣化してても顎下にピタッと付いている前足のかわいいこと。
後ろ足
後ろ足は爪がしっかり土台に突き立てられていて掻かれると痛そうだ。
腹の下にはどこか欠けたのであろう石が落ちている。
加工しやすいが脆い石らしさが出ている。
こういう欠けといったものもその神社のその狛犬の味であり個性であるので自分には好みだ。
経年変化とか好きなんです。
尾っぽ
突き上がった尻に乗っかっている尻尾は天を向いているわけではなく、山にかかる雲のようにやや斜めの横向きだ。
筋斗雲のようにも見えるのでその尻尾の上に人形を置きたくなってしまう。怒られそうなのでしませんが…
左側も見てみよう
左側の狛犬は口を開いた阿形で、その口の中には玉も見える。
稲荷神社で見られる狛狐はよく巻物や玉を咥えていることが多いが、この神社も一応稲荷神社なので通ずるものがあるかのようである。
その口の玉を中心に一枚
こうしてみると口の中の玉だけかなりきれいに残っている。
顔や手の表面がかなり劣化し、白カビみたいなものが生えているのに対してツルツルとしている。
狛犬がこの玉をしっかり守護しているかのようである。
手(前足)はこんなにやられているのに
後ろ足だってこんなに白くなっているのに
体を張って玉を守ってきたのだろうかと、そんな想像が勝手に働いてしまうのだ。
となればこの狛犬の体の劣化も男の勲章のようにも見えてくる。
ちなみに口を開いた阿形はオスだと一般的に見られる傾向があるので、ますます「男の~」とそう見えてくる。
尻尾
撮る角度によって尻に乗っかっているこの尾も山頂のように上を向いているように見える。
劣化はあって色々こびりついているものの形もきれいに残っている方だ。
土台を見た限り「大正十二年」と掘られていたので98年くらい前のものだと思う。100年近く前のものと考えると状態はかなりいいほうだろう。
いや、100年近くも前のものだと思うと神々しくも見えてくる…
まあ、逆光なのでちょうど尻尾の先端で太陽が光っているだけなんですけどね。
ダイヤモンド富士のようなものだ。
こういうのが撮れると、よりダイヤモンド富士のように撮りたくなるのが、いまだにカメラ初心者気分の自分の悪いところで、大したカメラもフィルターも持っていないのにどうにか撮れないかと試みてしまう。
あれこれ試した末に撮れた一枚が…
こちら
逆光…
結局その言葉しか思いつかない。
ピントも定まっていないし、F値も間違っているなと思うし…
これがいまの自分の限界だ。
なんとなくそれっぽい構図だけができたといった具合だ。
撮影日は11月の半ば頃、時間は昼の13時~14時くらいだった。天気は晴れ。
これはメモとして残しておいて、次につなげたい。
感想
穴水町前波の諸橋稲荷神社(神目伊豆岐比古神社)の狛犬、大正時代の100年近く前のものだったのでちょっと興奮してしまった。
形もなかなかきれいに残っているし、尻を上げた構え獅子の姿も時代や古さを感じさせ、且つ愛くるしかった。
時間と天気、撮る角度によってはその尻尾の先端を山頂に見立てて、ダイヤモンド富士のように撮れるんじゃないかという可能性も示してくれたのが嬉しい。
新しい発見である。
この手の構え獅子のタイプはどれもダイヤモンド富士のように撮れるんじゃないかと考えられるし、ダイヤモンド富士っぽいものが撮れるなら「パール富士」(月が尖端に重なるやつ)も撮れるんじゃないかとそんな淡い期待も抱けた。
ちなみに右側の吽形の狛犬でも挑戦
太陽が尖端とうまく重ならない。
ちゃんと天気や角度、周りの木々の有無といった条件が重ならないと駄目なんだなということもよくわかった。
そう考えると、失敗だ逆光だと思った左側の狛犬のダイヤモンド富士もどきの写真も案外奇跡的に撮れた一枚なんじゃないかと思えてならない。
失敗は失敗かもしれないけど、大事にしたいと思う。