今年もGW中の5月3日~5日の間に七尾市で、ユネスコ無形文化遺産にも登録された青柏祭が行われていた。
今年は真ん中の4日に足を運んだところ、本当の青柏祭を見ることができた。
5月4日に青柏祭へ
七尾市の青柏祭は3日間にわたって行われる。
三日間と言っても、初日は夜に行われるので見物客が多くくるのは4日と5日だ。
3基の「デカ山」こと巨大な山車が海側の食祭市場から駅の方へと曳かれる5日が特に多いだろうか。
青柏祭=デカ山のイメージが大きく、自分もその曳山の撮影目当てで足を運んでいると言っても過言ではない。
去年、一昨年と足を運んだときも共に5日であった。
今年は予定の都合上、4日が一番行きやすかったのでこの日に足を運んでみることにした。
4日では5日と何が違うのか、そういったものを知りたくもあった。
ということで七尾へ行ってきた
青柏祭は港そばの道の駅「能登食祭市場」から七尾駅辺りのエリアが会場になるので、駅か食祭市場を目指して行けば良い。
自分は駐車場の事も考えてこうして海の側の食祭市場の方へと向かったのだけれど、この道の駅の駐車場は見事にいっぱいだった。
ただ、このエリアには臨時駐車場がいくつか設けられている。
食祭市場のすぐ近くにも100台以上停めれそうな臨時駐車場ができていて、運良くまだ空きがあったので、今回はそこに停めることにした。
上の写真でもズラッと車が並んでいるのがわかるかと思われる。
とりあえず食祭市場の地図
仮に5日なら食祭市場に3基のデカ山(高さ12メートル、重さ20トン)が揃い、移動して七尾駅前でも揃う。
揃うのは5日だけかといえば、実はこの4日にも3基のデカ山が揃う。
場所は駅でも道の駅でもないのであまり知られていないのかもしれないけれど、この日は神社に3基のデカ山が揃うのだ。
その神社というのが七尾市山王町にある「大地主神社」(山王神社)だ。
大地主神社へ
大地主神社はこう書いて「おおとこぬしじんじゃ」と呼ぶ。
そもそも青柏祭はこの神社の例大祭だ。
行ってきた
昨年は5日の夜に青柏祭を見に行ったが、そのとき足を運んだのもこの神社だ。
(昨年の夜の青柏祭の記事は→こちら)
一度、こうして昼間に来てみたいと思っていた。
夜だと光量の低さから狛犬をじっくりと撮れなかったからだ。
そんなものでまず先に撮ってしまった
ここの狛犬は拝殿の前に2対いた。
こちらはそのうちの一対の吽形だ。
現代型のスタイルで、目や耳、爪に赤色が残っているようにまだまだ新しい。
その対の阿形
こちらも状態良くキレイである。
きれいすぎて口の歯や舌が生々しくもある。
なお、この写真でも少し写っているように、参拝客が多かった。拝殿の前では長い列ができていたくらいだ。
古いものもいる
すぐ近くに、年代が不詳な古い狛犬もいる。
海が近いからなのか、かなり表面が傷んでいる。
年季が入っていて、職人の愛用の道具のような趣がある。
相方はもっと劣化がすごい
劣化というか顔が破損している。
ジョジョのエボニーデビルのワンシーンのように刃物で顔面を削ぎ落とされたようになっていて、それを落ちないように針金で固定してあった。
ここまでダメージを負っていてもちゃんと残して、人の目のつく境内に置いてくれるその根性が素晴らしい。
自分は貧乏性だからか、自分が宮司でもこれも一つの味として残していたであろう。
そんな味のある珍しい狛犬がいる大地主神社にはすでにデカ山がいた
自分がこの日、この神社に到着したのは昼の12時ちょっと前だろうか。このときには2基の山車が揃っていた。
3基のデカ山が神社に揃う
大地主神社の鳥居の前はちょっとした広場のようになっている。
ただ、広場と言っても決して広くはない。
スーパーの駐車場のほうがよっぽど広い。
周りは民家だし道も狭い。
そんなところに重さ20トンの曳山が入ってくるのだ。
2基いたけどきれいに写真に収まらない
そんなに広くないからこれ以上、下がって撮ることができず、きれいに一枚に収まってくれなかった。
いたのは鍛冶町と府中町の2基だ。
鍛冶町の今年の人形は源氏物語
毎年変わる歌舞伎の演目等をモチーフにした人形飾り。
今年の鍛冶町は光源氏と紫の上が飾られていた。
『源氏物語』は昔読んだことがあるけど、紫の上って、子供の頃に引き取って自分好みのレディに育てて嫁にする(正室ではないが実質正室)男の浪漫(今なら犯罪かな)の話なので見上げながらつい笑ってしまった。
府中町の人形は小丸山城入城
前田利家公の小丸山城入城の一幕だ。
正室のおまつの方もいる。左には七尾城の城主でもあった次男の前田利政も飾られていた。
小丸山城は先日歩いてきたところなので、妙な親しみが湧いた。
(小丸山城を歩いた記事は→こちら)
こうして2基はすでに揃っていた。もう1基、魚町のデカ山がまだ来ていなかった。
祭りのパンフによれば正午過ぎには3基がこの神社に揃うと書いてあった。
なにせ民家の間の狭い道を通ってくるので、一台ずつ慎重に時間がかかってしまうのだ。
この道を通ってくる
ここは神社の斜め前辺りの道で、まだ広い方だ。
このように何車線もある大通りではなく路地を通ってくることになる。
掛け声等が聞こえてくるともう近い。
屋根の上になんか見えた
見えた…
なんかもうゴジラですな
家々の間を通ってくるとスケールが巨大怪獣のようだ。
上空ではヘリコプターがすごい音を立てているし
ラジコンでもドローンでもなく、本物のヘリコプターが飛んでいた。多分、新聞社かテレビ局のものと思われる。
ますます巨大怪獣がやってきたようであった。
曲がり角では辻回し
木遣衆の木遣り唄が歌われたり、テコの原理で前輪を浮かせたりと回るまで少々時間がかかるけれど、こうやってこんな巨大な曳山も狭い路地で曲がってくるのだ。
昨年、夜に見に行ったときも同じ場所で辻回しを見たが、かなり近くであったので、こうして少し離れたところから撮ることができて個人的に満足している。
巨大怪獣のようだけど、人の手で動かしているんだよなとこの瞬間に思い出されるのであった。
そうして神社まで曳かれて…
3基が揃う
この頃になると、最後の魚町のデカ山を追いかけていた人や曳いてきた人(一般の人も参加できる)が合流して人の数が一気に増える。
狭い広場(なんか矛盾)に人が集まってしまうので移動するのも困難になってくる。
魚町の人形は「大阪軍記血判取」
大阪冬の陣の後の和議で大阪城の外堀を埋めることを条件にした(結局内堀まで埋めてしまう)誓書に携わったと言われる人たちの一幕らしい。
知らない物語だったので、こちらは新鮮に見れた。
本当の青柏祭
神社の狭い広場に3基ものデカ山が揃ったのを見、撮影すると目的を達成してだいぶ満足する。
同じように感じる人って、この大勢の中でも少なくないかもしれない。
青柏祭のメインはデカ山、これを見て曳くことが目的、そんなイメージを持つ人も多いだろう。
なんでも地元の人が言うには、七尾市民の6割くらいが「青柏祭=デカ山」という考えで止まっているそうだ。
でも、青柏祭の、本当の意味での祭りはデカ山というわけではない。
この巨大な3基の曳山は、神様への供え物なんだとか。
境内ではなにやら結界が張ってあった
3基が揃う前から拝殿前には立ち入りが制御された空間が設けられていた。
そうして3基が揃った頃には、その縄の回りに少しずつ人だかりもできていた。
ここで何か行われるんだろうなと肌で感じとった自分も結界の回りで陣取ることにした。
地元の人曰く、何かではなく、ここで青柏祭の本祭が行われるのだ。
しばらく待っていると縄が外されていく
立ち入りを制止していた三角コーン等も外されていった。
この頃には昼の1時くらいだったろうか。山車3基が到着してから結構待っている。
そして宮司さんが登場
いよいよ本祭が始まるようである。
左の方が刀を掲げている。
なんだろうと思っていると、赤い狩衣の宮司さんが柄を掴んで抜いてしまう。
構えて…
バッツん
結界を断ち切ってしまわれた。
このことからわかるように、抜いた刀は真剣だったようだ。
この瞬間は四方からシャッター音、どよめきも上がって拍手も起きていた。
祭りのはじまりだ。
祭壇が用意される
結界を斬り、こうしてセットするところから神事を見られるって自分の経験上なかなかない。
続々と神職の方々が現れ、お供えものが運び込まれてきた
こういう神様へのお供え物のことを「神饌(しんせん)」というらしい。
その神饌を青い柏の葉に持って供えることから「青柏祭」と呼ばれるのだそうだ。
この事実、恥ずかしながら自分は今回はじめて知った。
儀式中に神職の方々が礼をすると周りの皆さんも一斉に頭を下げてしまう
自分も撮影しながらついつい頭を垂れてしまっていた。
これって日本人の条件反射みたいなものだろうか。
頭下げているのでファインダーを覗き込んでいなかったのだけど、それなりに撮れているから驚きだ。
すぐ近くで振られる大幣(おおぬさ)
自分に振られているわけでもないのに、目の前で大幣を振られているのを目にすると自分までお祓いしてもらっているような気になるから不思議なものだ。
このあと、自分もまたまた一礼してしまっていた。
祝詞を見守る地元の人や観光客
自分は結界のすぐ近くにいて、ファインダー越しに祭壇の方ばかり見ていたのであまり気づいていなかったが、こうして見ると周りに結構人が多い。
前の方で見られた自分はなかなか運が良かったのかもしれない。
いいものを見れたと、そう思う。
感想
今回の記事、表題を読む限りまるで狙ったように足を運んでいるかのようであるが、こうして本当の青柏祭を見れたのはまったくの偶然であった。
3基のデカ山を神社の前で撮るというのが今回のもともとの目的であって、その神社で4日にこういう神事が行われることも、それこそが本当の青柏祭で、デカ山もお供え物であるということも、まったくわかっていなかった。
この結界の前で何が起こるのかわからないまま待っていて、待っている間にすぐ近くで青柏祭について説明している人がいて、それを耳にしていたから知ることができたのである。
不思議な導きだと思った。
これこそ見るべきと、説明していた人も言っていたが、神々もそういうつもりで導いてくれたのかもと、そんな信心めいたことを考えてしまった。
とりあえずその導きに参拝することで感謝した
いや、これこそ一度は見ておくべきものだと自分もそう思った。
見ておかないと、なんでデカ山を見物して、曳いているのかわからないまま表面の雰囲気だけを楽しんでいることになる。
それはちょっともったいない気がしてくるのだ。
巨大なお供え物だ
初夏の晴れた昼頃で日差しが強く待っている間は暑さがちょっと大変であるが、知ることで楽しさが倍増することもあるので、一度4日に行われる本当の青柏祭も見物してみてはいかがだろうか。