ちょうど一年ほど前、珠洲市では約50日間にわたり奥能登国際芸術祭が行われていた。
市全域で展示されていた作品のうち、屋内展示されていたものの一部をこの秋、期間限定で久しぶりに公開するという。
そのうちの一つ旧飯田駅に行ってきた。
「またきます」を一年ぶりに果たしてきた。
一年ぶりに飯田駅へ
自分も四日間くらいかけて全てまわり終え、目にしたものを当ブログでも紹介してきた。
いい思い出だ。
その奥能登国際芸術祭が今年2018年に秋の限定公開を行っていた。
期間は9月22日~10月8日までの土日祝のみ。全8回の公開となる。
ただし、すべての作品というわけではなく屋内展示のもの計5点のみだ。
この5作品だ。
公開時間は9時30分から16時30分まで。
鑑賞料は1作品300円(小中高生は200円)で、すべて見れる共通券は1200円(小中高生は800円)だった。
自分は今回、時間の都合ですべてを回ることはできそうになかったので一つに絞って足を運んだ。
選んだのは河口龍夫「小さい忘れもの美術館」だ。旧飯田駅にある作品だ。
一年前、「また来ます」と記したのでまた行きたくなったのだ。
ということで行ってきた
久しぶりの飯田駅だ。
2005年に能登線が廃止になって現在では廃駅となっている。
一年前と外観は変わっていない気がする。
近くにはこんな幟旗も
芸術祭の幟旗だ。2017年と書かれてある。一年前に使っていたものだ。
懐かしい。
この駅舎やホームを利用して作られているのが「小さい忘れもの美術館」という作品だ。
看板もあった
かつてのものは「27番」という番号が書き込まれていたので、こちらの作品の概要が書かれた看板は新調されたものだろう。
駅舎に入ってみる
黄色の絵が残っている。
一年前に撮った写真と比べてみたが、まったくそのままだった。
この駅舎のカウンターで鑑賞料を払うことになる。その支払う場所も一年前と同じだ。この日は女性の方が座っていた。
女性の方曰く、作品はそのまんま残っていたのだそうだ。
チケット購入
ここしか行けそうにないので、個別鑑賞券を買った。
昨年はパスポート(共通券)を購入していたので自分には新鮮だった。
変わらず残る作品
駅舎の詰所も展示場
一年前もそうであったようにこの駅舎の部屋(詰所)も真っ黄色だった。
黄色の絵ではなく、部屋全体が黄色なのだ。
こんな…
感じで
懐かしい。
一年前に目にした風景そのままだ。
あまりにもイエローなものだから頭がおかしくなってくる感覚も一緒だった。
そう、一年前には記さなかったけど、あまり長居をしたいと思わない空間なのだ。
イエローって常人には刺激が強い色な気がする。
下駄箱はまだ一部だけ黄色
土間の方はこのようにすべてが黄色というわけではなく、落とし物を使ったオブジェのみ着色されている。
あの部屋からこの土間に出るだけで、すんごくホッとした気分になってしまう。
外に出るとさらに落ち着く
山の中にある駅で、そのホームも木々に囲まれているのでマイナスイオンでも出ているのだろうか?
それくらい落ち着く。あの黄色い部屋とのギャップがまたすごい。
地面に刺さった傘と貨物車両
この演出も変わっていない。
懐かしい。
ついでにいうと木漏れ日まで懐かしく感じた。
思い出すとあの頃といまと季節も一緒だ。
残暑のために半袖を着て、耳に届く虫の音も同じに思えた。
これは…初めて見た気がする
誰かが書いていったのだと思われる。
誰かが書く… そう、この作品には鑑賞者がこのように自由に書き込める場所もある。
自分が今回の限定公開において何よりもここに行こうと決めたのはその書き込みを見に行きたいと思ったからだ。
一年前に書いたものが残っているのか、それとも残っていないのか?
残っていないならまた新たに書き込みたい、そう願って足を運んでいたのだった。
貨物車の中のメッセージ
それは貨物車両の中にある。
鑑賞者にメッセージを書かせるという演出そのものが無くなっていたらどうしようかとも思ったけれど、貨物車両がホームに残っているのを目にして、その心配も杞憂かなと思えた。
車両入り口に立つ
「形式ワム80000」と書かれた車両だ。
その入り口を覗いてみると、ちゃんと内壁にチョークで何かが描かれ、書かれているのがわかった。
ちゃんと書かせるという演出もそのままだったのだ。
あった、あった
昨年にも目にした同じものが。
車両の中の内壁が黒板になっており、このように「忘れたくない言葉」や「未来に残したい言葉」を書くことができるのだ。
ただし…
昨年書いたものは残っていなかった
中はこの様になっている。
自分が以前に書いた、写真でいうと右手の壁にはチョークで絵が描かれていた。
受付の方曰く、昨年のものは芸術祭が終わってから一度すべて消されているそうだ。
なんでも今年8月にもこの作品は一度公開されているようで、現在書かれてあるメッセージや絵はその8月から残されているものだそうだ。
以前書いたのは確かこのあたり
ド~ンと女性と思われる人の顔が描かれていた。
自分にもこういう絵心があればなにか描いていたんだろうけど、あいにくそんな才能は持ち合わせていない。
残っていないならまた書けばいい
ということで空いているスペースに、チョーク片手に書き始めた。
書いているその手を自分でカメラで撮れるというのは左利きの特権だと思う。
はい、「また来たよ」
昨年の自分はこの黒板に「また来ます」と残している。
舞い戻ってきたので挨拶した。我ながらまるで友達感覚だ。
そうして…
また「また来ます」
芸がなくてごめんなさい。
忘れたくない言葉といったらこれくらいしかやっぱり思い浮かばなかった。
でも事実、前回こうして記したおかげか、一年たった現在もここに記したことを覚えていたし、また行きたいと思ったものだ。
奥能登国際芸術祭はまた2年後にも行われるかもしれないと言うので、二年後まで忘れず、そうして有言実行したいものである。
また来れてよかった。
感想
奥能登国際芸術祭の秋の限定公開、一度見たものなので真新しさを求めにやって来たわけではないことは向かう前から自分も承知していた。
実際、こうしてたどり着いて、駅舎の作品が一年前とそのまま残っている姿を目にすると田舎に帰ってきたような懐かしさがあった。
あのときは全部回ろうと駆け足だったけど、今回はこれ一つと絞ってやって来たこともあってか、よりのんびりと落ち着いた気持ちで見れた。それがまた、その懐かしさを深いものにしていたのではないだろうか。
以前書いた黒板の文字は消えていたけれど、新たにまた書けたことで、次へと繋がったと思われる。
次とは、この地に再びやってくることだ。
また帰ってきたくなったのだ。
一つ故郷ができたようなそんな気にさせてくれた秋の限定公開であった。
大事なものは目に見えないらしい
改めて。5作品のみだが限定公開は10月8日までやっています。
芸術祭の楽しさを思い出したい方、昨年行きそこねたので雰囲気を味わいたい方などは、足を運んでみてはいかがだろうか。