輪島市の北の方、国道249号線を車で走っていると塚田町あたりで道路沿いにふと狛犬を目にする。
狛犬写真家を自称しようかと目論む者としては以前よりその道路を通るたびに気になっていたので、このたび車を停めてマジマジと眺めてきた。
輪島市塚田町を車で走っていて見かける狛犬
塚田町は海沿いにある。
輪島温泉のホテル高州園なんかがある町だ。
地図でいうとここだ
ちょうど国道249号線が走っていて、その道を通っていると何かの大きな会館の前を過ぎていくことになる。
そこの玄関前に狛犬がいる。
これが件の建物
249号を走っていると海側とは逆の方にこの建物がド~ンと見えてくる。
どこか廃れているけど存在感のある建物だ。
「祭」の文字
側面にはこのように「祭」の文字がいくつも見える。
実はここ、「輪島キリコ会館」だったところだ。
キリコ祭りで使われるキリコ(巨大な切子燈籠)が展示されていたところだ。
こんな看板もあった
同館は2015年に近くのマリンタウンへと移転、リニューアルされているので、言うなればここは「旧輪島キリコ会館」だ。
廃れているのは当然で現在は使われていない。
使われていない具合がわかる画
一瞬見たとき「死体が!」と思ったけど、人形だ。
おそらく祭りの様子を人形を展示して紹介していたのだろう。
使われなくなったその人形が玄関の扉裏に放置されていたのだ。
上半身と下半身が分断されているので、夜だと多分ホラーに見える。
このように外観が廃れている旧キリコ会館であるが、その入口前に置かれた狛犬だけはキレイに残っている。
この旧会館がいつ壊されるともわからず、そうなれば消え去ることになるかもしれないその狛犬を記憶にとどめておこうとこのたび撮っておいたので、以下にまとめたい。
旧キリコ会館の狛犬
狛犬は入口の柱の前にいる。
神社ではないので周りに社も鳥居もないが、その狛犬の姿はよく神社で見られる立派な狛犬の姿をしている。
これらがその
狛犬たちだ
しかも子連れ狛犬だ。
その姿はいわゆる岡崎現代型と呼ばれるタイプのものだ。昭和以降の狛犬はだいたいこれで、神社に行くとよく見かける。
吽形の顔をチェック
凛々しい顔だ。
こうしてみると比較的新しい。
いつ作られたものかよくわからなかったが、崩れたところもほぼなければ変色すらほとんどしていない。
子供の方もキレイに残っている
母の腕にしがみついている手もしっかりと視認できる。
かわいい手だ。
阿形(獅子)の顔もチェック
鬣もしっかり残り、頬の隆起もついこの間出来たばかりかのような躍動感がある。
ただ、左側の下の歯が折れているだろうか?
手毬もキレイ
子獅子とだいたい対を成すマリだ。
その文様、そしてそれを抑える前足の指関節部分までくっきりとしている。
建物そのものは使われなくなって人形が玄関で分断されたまま放置されているくらい廃れてきているのに、これら狛犬はまだまだ現役といった風体だ。
これだけキレイに残っているだけにいつまでも残っていてもらいたいものだが、もしこの旧会館が取り壊されて新しい何かがこの土地に建つようなことになったら、この狛犬たちも処分されてしまうだろう。
今回の撮影は在りし日を記憶に留めるための撮影でもある。
そのことを思うと、少し寂しくもなった。
海を眺める獅子
やっぱり、寂しい。
母子狛犬も海を傍観
実はこの母子たちが向いている方角(正確ではないがだいたいこっちの方)に、移転してリニューアルされた「輪島キリコ会館」のあるマリンタウンがある。
この母子が置いていかれて恨めしく思っているのか、それとも旧会館から見守っているのか、それは彼女たちのみぞ知るといったところだろうか。
個人的には見守っていると思いたい。
いつか新「輪島キリコ会館」へ
以上、旧輪島キリコ会館にいる狛犬の写真だ。
岡崎現代型の狛犬で、決して珍しくもなく、狛犬好きからすると見飽きたものかも知れないが、いつかこの建物が壊されることを考えると今しか見れない、ある意味貴重な狛犬であろう。
今後今狛犬たちがどうなるかわからない。もし建物と一緒に取り壊されるようなら物に永久不滅はないことを我々は教えられることになるだろう。それも自然と風化して役目を終えるのではなく若くして消えていくのだ、世知辛さも教えられることになるだろう。
なんだかこれら狛犬たちを見ていると人と変わらなく思えてくる。
ちなみに現在の「輪島キリコ会館」はこちら
建物だけ撮っておいた。中にはまだ入っていない。
いつか入りたい。
その際はあの狛犬たちのことも思いだしながら見学したいものである。