珠洲市にて9月3日より50日間開催されている「奥能登国際芸術祭2017」へ10月14日に足を運んできた。四度目の訪問にあたるその様子を紹介する「のんびりまわる第四日目」のその3だ。
今回は若山エリア上黒丸で行われていた芝居やダンスパフォーマンスを中心に紹介したいと思う。
再び若山エリア上黒丸へ
若山エリア上黒丸地区へは、第二日目(9月9日)にも足を運んでいる。
(第二日目の時間の都合で若山エリアに足を運んだもののこの上黒丸の作品しか見れなかったという経緯がある)
そこにある34番の作品も当ブログにて紹介した。
(34番の紹介記事は→こちら)
こうして改めて足を運んだのは、この上黒丸の作品がただの展示物ではなく、その場で芝居や踊りの公演もすると聞いていたからだ。
今回訪れた10月14日には金沢の劇団「アンゲルス」の芝居も行われていた。むかし知り合いがアンゲルスに所属していて何度かこの劇団の芝居を見に行ったこともあるので、久しぶりに見てみたかったのだった。
ということで34番のある旧上黒丸小中学校へ
脚立のようなものにリボンのようなものが大量にくくりつけられているのが34番の展示物だ。芝居はこの前で行われることになる。
もう一つの展示物である中庭に置かれていた「月を映す花舞台」で行われるのかとも思っていたが、こっちであった。
前回、自分もこの脚立にリボンをくくりつけている。鑑賞客一人に一本リボンを与えられ、くくり付けていく参加型のアートなのだ。
前回、校庭の一番奥の脚立にくくり付けていた自分
それを再び確認しに行く自分
ちゃんとあった。なんか嬉しい。
それにしてもくくり付けられたリボンの数がすごく増えている。
以前と比べると枯れ木に花が咲いたように見えた。
前回と同じように海水で炊いたじゃがいもも置かれていた
こちら、自由に食べて良い。
前回は公開時間終了ギリギリにやって来たので誰が作っているのかわからなかったが、この日は昼時にやって来たこともあって、作っている様子も見れた。
このように(五右衛門風呂ではないです)
校舎の前で地元の方々が作っていた。
すんごく沸騰していた。ここに来る前に五右衛門風呂で足湯をしていたので、それと比較して、これに足を突っ込んだら大火傷確実だなと、そんなことを考えてしまった。
このじゃがいもを食べながら芝居を見ていた人もいた(自分もその一人)。
芝居と舞踏
ここからは校庭のオブジェの前で行われていた芝居と舞踏の公演の様子の写真を羅列して簡単に紹介したい。
劇団アンゲルスの『東の国から(浦島太郎)』
金沢舞踏館の『舞踏 in アートスフィア上黒丸』
この二つの公演を見れた。
まずはアンゲルスの芝居の様子
アンゲルスの芝居ではだいたいみなさん白塗りの顔。
浦島屋という旅館にやって来た男の話から、昔話で誰もが知っている「浦島太郎」へと流れていく芝居だった。
このように校庭の芝の上が舞台だ。
「芝居」って、もともと寺などの境内で行われていたそうで、観客は芝の上に腰を下ろして見ていたことから「芝居」っていうそうだ。
この公演では舞台も客席も芝の上だった。原点に立ち戻っているような公演だ。
自分が座っていた椅子
旧小学校で使われていたと思われるイスだった。
懐かしい。
舞台では贈呈式…ではない
玉手箱だ。
開けたときの演出も演者の手によるもの
いまでこそ照明を駆使したり、ガスを噴出させたり、いろんな機器を使って舞台って演出されているけど、むかしはそんなものもなかったし、なくてもちゃんと芝居になっていた。
こうして演者の手によって演出に華を添えれるし、何より演者の演技力で魅せることもできる。
自分は今回の公演を見ていて、町の人達の力で作り上げ、「都会じゃないと人を呼べない」という固定観念を壊してくれたこの「奥能登国際芸術祭」そのものといろいろと重なるものがあった。
演者の皆さんは乙姫様を筆頭に声量もすごかった
屋外なのに台詞がよく聞こえる。マイクを通しているのかなと思えるくらい。
役者ってすごいわね。
撤収の様子も撮影
自分、学生時代に先輩の舞台の手伝い(大道具)をしたことがあるが、何故か作るより撤収の方が楽しかった思い出がある。そのためか、こういうところまで見てしまう。
続いては金沢舞踏館の舞踏
こちらの出演者は、男一人、女一人の二人だけだった。
舞踏なので肉体だけで魅せる。BGMは流れているが、台詞などは一切ない。
そして校庭をものすごく広く使っていた
まるで脚立のリボンもこの舞踏のためにあるかのようだ。
全身真っ白の男性演者は…
後半になるほど泥だらけになっていた
女性演者はその中腰姿勢に注目
中腰や踵を浮かしながら停止しているときの腿やふくらはぎの筋肉がカッコよかった。
ムキムキマッチョとは違うあの女性らしい筋肉がイイ。なにより、あの姿勢をよくキープしていられるなと感心。
顔芸もスゴイ
パフォーマーですわ。
登るのうらやましい
演出上、脚立に昇っていた。
自分なんかは昇ったら怒られるだろうなと思って遠慮していただけに、あっさり昇ってみせる姿になんかシビれた。こうしてポーズを取る姿、羨ましい。
最後、これって新しい命を宿したってことなのだろうか?
不思議な舞踏の中にもうっすらとテーマのようなものも見えた気がする。勝手に想像するのも楽しかった。
終了後、走って戻ってくる女性演者の方
最終盤、演出上、校庭の奥の方で踊っていた女性演者がプログラム終了後走って戻ってきた。
一気に現実に戻った瞬間だ。演者は学生や社会人の方だそうだ。
それだけで飯を食べているプロだけが表現者ではない、久しぶりにそう思えたパフォーマンスだった。
前回見れなかったものを探す
前回、第二日目に足を運んだ時、後日、新しい展示物が敷地内に増えると受付の方に聞かされていた。
演劇や舞踏を見たついでにそれも確認しに行ったので、少しだけ紹介したい。
以前、中庭の方にそれはあると聞かされていたのでその方へと向かったら、向かう途中でこんな案内を見つけた。
作品設置場所とある
「幻の村アートキャンプ」と言うものらしい。
当ブログにて34番の作品を紹介した際に一緒に紹介した体育館にあった虫干しの着物たちもまたこの「幻の村」に数えられるそうだ。
「幻の村」は金沢美術工芸大学彫刻専攻有志展示企画とのこと。
しかもこの地図によると、中庭の方には展示物がない。
実際に足を運んでみても…
特に何もなかった
あのとき教えてもらった情報は何だったのかと思うけど、学校内やグラウンド裏に作品が展示されていることは確かなようだ。
その内の一つ、グラウンド裏にあった作品を撮ってきた。
グラウンド裏に何かあった
最初目にしたとき、企業局の水道工事かそれに近いものだと思った。
それが寄ってみると…
地球に降下して地面に埋まった小型宇宙船のようなものがあった
すきまのおもちゃシリーズ~万華鏡~「天地のすきま」という作品名だった。
作者は「仲 駿輔」(なか しゅんすけ)という方だった。
入ってみると空が抜けていた
そして中は万華鏡のようだった
入った者がビーズなどの細片の代わりとなるカレイドスコープだ。
説明書きには、地中から空を目指す種の気持ちとはどんなものだろうか、という疑問も提起していたので、「種」の気持ちになって入ると良いのだろう。
分身の術
自分が考えていたことはこんなしょうもないことばかりでしたが…
感想
以上、上黒丸で鑑賞した演劇と舞踏と、有志によるアート作品(一部)の紹介だ。
1から39のように番号を振られたアート以外にも色々とやっていたんだなと伝われば幸いだ。
特に若山エリアは上黒丸を中心に「アートスフィア上黒丸」というアートプロジェクトが試みられており、ここだけでもいろんな催しが行われていた。自分としてもすべてを見れなかったことを残念に思っている。
まあ、それを言ってしまったら、若山エリア以外でもあちこちでいろんな催しがこの芸術祭に合わせて行われていたのだから、言い出したらキリがない。
奥能登国際芸術祭ってそれくらい大きなイベントだったんだと、しみじみ思う今回の演劇&舞踏鑑賞であった。
演劇や舞踏が「もうじき始まります」と告げる時に使っていた太鼓
現場では決して大きなことをやっているわけでもなく、人の手で作り上げているんですけどね。
それくらいこの芸術祭に色んな人が集まっているということなんだろう。
次回は、いよいよ最後、39番の作品である太鼓のイベントを紹介したい。