石川県能美市の大長野町では8月ごろになると町中のある農道に、個性的というかどこかシュールな案山子(カカシ)がならぶ。
地元では「かかし街道」と呼ばれているもので、なんでも交通安全を訴えるために作られたそうだ。今年で3回目の取り組みとのこと。
以前より一度見てみたいと思っていたので、先日その農道を探し出して写真を撮ってきた。
撮った写真を羅列し、色々ツッコミどころのあるそれらカカシを愛でたいと思う。
大長野町を探す
「かかし街道」は能美市の大長野町にある。
ただ、大長野町のどこにあるのか具体的な住所はあまり知られていない。
自分もよくわからずに車を走らせていたので、大長野町で少しウロウロとすることになった。
探して迷ってようやく見つけたその街道は町の体育館の前にあった。
目印は「能美市大長野体育館」
もし「かかし街道」の場所がわからない場合は、この体育館を目指せば良い。
この体育館の真ん前に立って正面に見える農道が「かかし街道」となる。
かかし街道だ
もうすでに案山子が見えている。
田畑の多い石川県では、田んぼ沿いなどを車で走っているとこうした案山子をたまに目にする。
たまになので、現代ではカカシの存在自体がなかなか珍しい。田園に一体見かけるだけで、この田畑では変わったことをやっているなと思えてくるレベルだ。そんな珍しいカカシが…
ここではズラッと並んでいる
案山子にはカラスなどの害鳥を防ぐ効果はあまりない、カラスが慣れてしまったら普通にやってくると現代では言われているが、リアルな人間みたいな格好をしていてこれだけ並んでいると、さすがに迫力がある。
シラサギも逃げていった
偶然であるがシラサギが飛んでいた。しかも案山子から逃げるように飛んでいた。
鳥からしたら恐いのかもしれない。でも、人間からしても、ここに並ぶカカシはある意味こわい。
そしてその「こわい」は、見方を変えると「愉快」でもある。
それら愉快な案山子の写真を以下に並べ、それらに一言個人的な感想という名のツッコミも添えていく。どれもツッコミたくなるのだ。
一体ずつ愛でる
街道のスタート付近に門番のようにいる一体
なんだこのサモ・ハン・キンポーみたいなのはと、いきなり衝撃的だった。
アーティスティックな案山子をイメージしていると出鼻をくじかれる。
しかも胴体には「スピード落とせ」だ。
いや、落としてしまうだろうけど、代わりに脇見をしてしまいそうだ。
サモ・ハンではなくよく見るとマツコ
体型と併せると何かが違うと感じてしまうけど、こういう「何かが違う」は今後も続くので、ここではこれもある意味正解だ。
顔はお絵かきチック
人間の帽子をかぶって、人間の服を着ているのでサイドから見ると人間らしいこの案山子も正面から見ると顔が子供のお絵かきみたいでギャップが愉快だ。
こちらも
顔だけ見ると明らかに二次元
こんな調子なのでサクサク行きたい。
お父さんのポロシャツだろうか、肩幅広め
自然の中に溶け込む油絵のようなお姉さん
この顔とか何で出来ているのだろうと近くに寄ってみると…
どうやら発泡スチロールのようだ
ヘイ、タクシー!
もしくはクラシックバレエを踊る農家の嫁さん(西洋人)だ。
古武術女子高生
寸胴なのは気にしない。
腕の作りは気になる
顔が発泡スチロールなら、腕はスポンジにテープをぐるぐる巻きにしてその上から色を塗っているかのようであった。
触ってみると柔らかいのだ。
靴も本物の靴ではない
ビニールテープか養生テープかで靴の形だけを模していた。
こういうのもいらっしゃる
こち亀、終わってしまったんだよなぁ
ネタもマニアックだし、コマの背景も細かく描いてくれるこち亀が好きだっただけに連載が終わってしまって個人的には寂しいが、こちらの案山子は爽やかだ。
看板に隠れたものもいた
カカシは基本的に歩いてきた道路の右側に並んでいたのに、こちらの一体だけは左側にいた。しかも看板に隠れている上に座っているから見落としやすい。
変な案山子が多い中で、こちらがある意味一番特殊なのかもしれない。
なお、このカカシまでを街道の前半としたい。
ここから後を、中盤、後半として見ていきたい。
一体ずつ撮る(中盤)
こういう小さいのもいた
ズボンは間違いなく子供用ですな。
ランドセルは、養生用のボードかなにかだろうか
この手近なものをなんでも利用する手作り感がたまらない。
中にはこんなシュールなものも
少女漫画のような美形の顔と体型と衣装の派手さ、このアンバランスさは見事だ。
このポーズももう「ツッコミいつでもウェルカム」の構えに見えてならない。
アンバランスと言えばさらにこんなのも
手足長~い。
指ではVサイン
学生時代にプロレスが好きだった自分にはどうしてもサミング(目潰し)って技ばかり連想してしまう。
それにしてもバイキンマンって指あったっけ? まあ、いいか。
隣にライバルもいた
やはりプロレスが好きだった自分としては「ラリアット」って技ばかり連想してしまう。
ライバルは「グー」
ジャンケンだったらアンパンマンの勝ちのようだ。
案山子になってもヒールは負けてベビーフェイスが勝つようだ。
さらに隣にはこんな一体も
「やなせたかし」ワールドとは関係ないけど、この人も入れたらジャンケンはアイコだ。
そのまた隣にはこんな一体も
ジャンケンのジャッジをしているようにも見える。
ただ、顔は怖い。
これ、子供が夜に目にしたらトラウマになるんじゃないだろうか。
目の前に仏様がいるので、怖くなったらこちらに拝もう
仏様がいるのはこの「大長野やすらぎ公園」
公園というか仏様がいる小さな休憩所だ。
そしてここから「かかし街道」も後半戦となる。
ちなみに中盤戦の〆はこの一体だった
妖精や怖い顔や仏の後だけに、より人間に見えてくる案山子だ。
こういう顔と体型をしたおっちゃん、いる。
一体ずつ撮る(後半)
後半戦、一体目
後半戦、いきなり世の中ナメた感じ。
日の丸の鉢巻に旗は「なめ猫」を思い出す
でも「なめんなよ」ではなく、どう見てもこちらは「世の中ナメた感じ」。
体系的により人間的な案山子が多い
顔以外は人間に近いサイズでありビジュアルをしている。
と思ったけどすぐにこういうタイプのものも…
平和な顔だ
顔もより人間らしい一体
モデル顔だ
そしてまた人間じゃないものに遭遇
こちらの顔もテープで出来ているようだ。
殺る気だけならこちらのほうが高め
走る気ならこちら
こちらも「走る」気では負けていない
「愛機」と書いて「マシン」と読むような大人になりそうな子供だ。
唐竹割りを鍛えてレスラーになりそうな子供でもある。
この案山子の王道「へのへのもへじ」の顔を持つ少年のようなカカシがこの街道の最後の一体だ。
右手を上げているのは「じゃあな」と挨拶をしているからなのかもしれない。
ただ、こちら側から歩いて行くとなると最初の一体になるので「よっ!」と気さくに挨拶してウェルカムな態度で向かえているようでもある。
どちらにしてもインパクトが大きく、かつ子供っぽく見えない素振りである。
最初から最後までオルタナティブなカカシたちであった。
まとめ
能美市大長野町の「かかし街道」、決して長い距離ではない。
身長180cmの自分の足で610歩の長さだった。だいたい500メートルくらいだろうか。
そこに並べられた上記のカカシたちは有志による手作りだそうで、冒頭にも記したように「交通安全」を呼びかけるために作られたそうなのだ。
なんでも、2年前に農道の交差点で交通事故が起きたのだとか。
そのため、カカシたちの間には以下のような幟旗も見られた。
交通マナーを訴える旗(他にも数種類あり)
かかし街道は交通安全を改めて考え、心がけるための農道なのである。
カカシに見とれて却って危ない気もするけれど、その点は…
町としても警告しております
交通安全を啓蒙する案山子が交通安全の弊害になるかもしれないこのパラドックスも面白かった。
もうツッコミを待っているようで、そうやってツッコませることで結果として交通安全を改めて意識させようとしているのではないだろうか。
そんな深い意味を込めて有志たちがこれらカカシを作っているようにも思えてきた。
最後になるが、ちなみにこの街道…
基本的に一般車両は通れない
見に行く場合は、徒歩だ。
遠くに山も見え、季節によれば稲穂も垂れてと、散歩していて気持ちのいいところであった。
風景写真を撮る点でも良いスポットだろう。
確かに、こんないいところでもう二度と交通事故は起こってほしくないものだ。
ふざけているようでも無事故の願い