石川県加賀市永井町の大聖寺川の傍に、うさぎと戯れることができるちょっとした広場があるらしい。
しかも入場だけなら無料という。
動物好きになってしまった者としては聞き捨てならない話なので、昼時に行ってきた。
中庭のような広場とオブジェ
その場所は「月うさぎの里」と呼ばれている。
何故ウサギかといえば、江戸時代、大聖寺藩永井村にて鳥見徳兵衛という人が傷ついた白いうさぎを助けたらしくて、その白ウサギのおかげで続いていた大雨が止んで、きれいな月が出て、その年は豊作になったのだとか。それ以来このあたりではうさぎはツキ(運)を招くものだとして親しまれているのだいう。
なにはともあれ入ってみた。
広場の様子
円形状に連なる飲食店やお堂の中庭が広場となっている。ここにウサギが何羽(何匹)も放されているのだ。
この写真ではどこにウサギがいるのかわかりづらい。
実際、広場を広く見ようとするとウサギたちの姿はなかなか視界に入ってこない。
これかなと思ったらオブジェだったりする
この広場、こうしたオブジェもあちこちで見かけられる。
小さなネコくらいなら、子供も楽しめる広場っぽいなと思うところだが…
亀のオブジェがいたと思ったら
カニのオブジェもあった
しかもこのカニ、なかなかデカい。
だんだんとおとぎの世界に思えてくる。
そうかと思えばナマズの群れ
写真では3匹だが、もっといた。
これはこれでかわいいが。
ベンチには子鬼の姿も
こういうのがあると、ファンタジーはファンタジーだけど、ゴシック・ホラーの香りがしてくる。
それにしてもこのデザイン、どこかで見たことあるなと思ったら、この月うさぎの里には現代彫刻の鬼才と呼ばれる籔内佐斗司さんの作品が並ぶ美術館もあった。
つまり薮内氏がデザインしたものだと思われる。
薮内さんといったら平城遷都1300年記念事業のマスコット「せんとくん」を生み出した方だ。
見ていると、どことなく「せんとくん」の面影がある。
その美術館の壁にはヤモリのオブジェも
今回はウサギが目的であったので、美術館には立ち寄らなかった。
なお美術館に入るには300円(中高生200円、小学生以下無料)の入館料がいる。
こんな奇特なオブジェもあった
どう見ても壁にハマって抜けない構図なのだが、犬の顔に悲愴感はない。
すごいセンスだ。
ダストシュートの上にはウサギの里らしく兎のオブジェもあった
壁の犬も含めて、オブジェはベンチの上だったり、路上の隅だったり、小川の中だったり、何気ないところにいることが多い。
ほら、柱の側にもウサギのオブジェが
・・・・・・・・・。
いえ、こちらオブジェじゃなくて、ホンモノのウサギです。
広場を広く見ようとするとウサギがどこにいるかわかりづらかったけど、すぐ足元にウサギがいたりする。
灯台下暗しというものだろうが、普通に近くにいたので、それがリアル兎だとわかったときにはちょっと驚いてしまった。
あちこちでまったりしている本物のウサギたち
よく見ると、広場にはウサギたちが何羽もいる。
しかも、どれも柱の陰や軒下や木陰でのんびりしているので、一瞬見た限りではオブジェのように見える。
オブジェがたくさんある広場だけになおさらそう見える。
本物のウサギもオブジェのように殆ど動かないんだ理解してようやく「たくさんいるな」と思えるようになった。
普通に敷地内で寝ているウサギたち
こうしてみると広場というより田舎町の蔵の前で寝そべっているみたいだ。
田舎の祖父母の家の近くでは、こんな感じで野良猫たちが蔵の前(日陰)で寝そべっていたが、こちらは猫ではなくウサギだ。
野良猫のようにリラックスして人間社会に溶け込んでいるのだからなんだか奇妙だ。
こっちでも横になっている
あっちでも休んでいる
同じところでみんなしてまったり
この日は気温が30℃近くまで上がっていたので、動きたくない気持はよく分かる。
日陰にばかり集まるのもよくわかる。
それでも、何かと忙しい現代の人間と比べると、まるで住んでいる次元が違うように映る。
彼らは人間に慣れているので、自分たち人間が近寄っても、特別驚いたり、いきなり逃げ出したりもしない。
マイペースに横になって、自分たちの時間を過ごしているのだ。
涅槃とはこういうところだろうかと、彼らを見ていてふと思ってしまった。
そんなウサギたちにエサをやれる
このように自販機があり、200円から300円でウサギの餌を買うことができる。
ペレット状のものやコーンフレークみたいなものもあるようだ。
これを買えばウサギたちも自分の周りに寄ってくるだろうと考え購入しようとしたら、あいにく自分の財布の中には万札しかなかった。
まいったなぁと思って敷地内をウロウロとしていると、そのうち一組のカップルがエサを買っていた。
そしてエサを買っただけではなく、近くに置いてあったこういったものまで装着し始めた。
うさミミだ
無料で借りることが出来るのだ。
男性の方も女性の方も二人して「うさミミ」 を装備していた。
うさミミをかぶって、さらには二人してサングラスもしていた。ディズニーランドにいる遊園地馴れした観光客のような格好でエサを与え、寄ってきたウサギたちとスマホで自撮りしていた。
そこまでされたらなんだか勝ち目(なんの勝負かは自分でも不明)がないなと悟った自分はエサを買うのを諦めたのであった。
のんびりとまったり具合を撮る
ということで、カップルがSNS映えのするものを撮るなら、こちらとしてはSNS映えしないような写真を撮ってやろうと考えを変えた。
その結果として、ひたすらウサギたちのまったりした姿を撮っていたので、そんなウサギたちの人間社会の喧騒からずいぶんと乖離したニルヴァーナな姿を捉えた写真ばかりを以下に並べたいと思う。
日陰に同化
草をむしゃむしゃ
ひっそり水飲み
足なめなめ
耳裏かきかき
一人かくれんぼ
頭隠して尻隠さず
伸脚でプリケツ
うつ伏せ
居眠り
爆睡
おこさないで下さいと書かれた札
ええ、起こしませんでした。
ウサギの年齢早見表もあった
これによるとウサギは一年で人間でいう成人になるようだ。
ビールが飲める歳だ。
むかし、働くお父さんたちが日曜日に家にいて何もしないでいると置物のようだと言われていた時代があったが、彼らがそんな中年のお父さんのように見えた。または午前に野良仕事を終えて昼間からは木陰でのんびり涼を取っているお年寄りに見えた。
どちらにしても、人間で言う「若さ」を感じない。
エサはなくとも…
ここのウサギたち、人に慣れて、おまけに人懐っこいからか、横になっている傍まで近寄って写真を撮っていると、エサを持っているわけでもないのに近寄ってくることがある。
近寄ってきた
のんびりしていたのにのっそり起き上がって足元まで近寄ってくる。
おそらくオヤツをもらえると思っての行動だと思う。
エサを持っていないとわかるとすぐに退散してまた寝そべってしまうのだ。
それでも、気がついたら自分の周りに何羽も寄っていた
中にはこちらの足にしがみついてくる子もいる。
カワイイ奴らだ。
シャターチャンスでもあるのでここぞとばかりに近い画を撮った。
だいたいシャッターチャンスは一度切り
目の前でレンズを向けてシャッター音を聞かせると、だいたいそれですぐに退散してしまう。
こいつはエサをくれない奴だとそれだけですぐわかるのだろう。
物欲しそうな表情
申し訳ない、君らが寄ってきてくれるからますますオヤツを買う気がなくなりました。
なお、この広場のうさぎたちはお触りOKだ。
ただし、ルールがある。
触るだけでも手袋を使用しなければならないのだ。
広場の入り口を通り抜けてすぐに手袋がある
こちらは無料で貸し出されている。
ウサギといえ動物なので、引っ掻いたり噛まれたりはある。
この手袋をはめずにウサギに触れて怪我をした場合は責任を負いかねますとも書かれてあった。
ルールは守らないといけないのだ。
と言いながら素手で触ってしまった
あまりに可愛すぎて、シャッターを切りながらつい手が伸びてしまった。
さわり心地はモフモフでした。
※素手で触ったのはこの一瞬だけ
また、抱っこは、仮にウサギの扱いに慣れている人でも基本的に禁止だ。
抱っこは「抱っこタイム」というものがあり、その時間の間だけ係員の指示の下ですることができる。ちなみに抱っこタイムへの参加は有料だ(200円かかる)。
自分がやってきた時、その抱っこタイムまで1時間以上待たなければならなかったため、時間の都合上断念した。
代わりにウサギがウサギを抱きマクラにしている画が撮れた
寝ている一羽を撮っていたら別の一羽が自分に近づいてきて、結果的にこうなった。
そして下の子が目を覚まして、驚いてものすごい勢いで逃げていった。
「脱兎のごとく」をリアルなウサギで見ることができた。
ずっとすんごいのんびりしているのに逃げる時はかなりクイックだ。
亀もいる…しかも元気
この広場、うさぎの里なんだけど、カメもいる。
オブジェではなく本物の亀だ。
童話なんかでよく比較される両者が、同じ敷地内にいるのである。
カメだ
ムッシャムッシャと笹を食べていた。
ちまちまと食べるウサギと比べると食欲の旺盛さで勝っていた。
歩いているカメもいた
歩行速度は遅いのだが、広場の端から端まで歩いていた。そしてまた戻ってくる。
逃げる時は速いがすぐにまったりモードに入るウサギと、足は遅いがずっと歩く持続力のあるカメを、自分はこの場で両方目にした。
童話「ウサギとカメ」そのものだった。
カメに関してこんな案内もあった
カメの口に手や指を近づけると噛まれる可能性があるようだ。
こういう手作りの案内、大好物だ。
まとめ
この他にも珍しい種類のウサギもいて、この「月うさぎの里」は生きたウサギの生態資料館みたいな広場だった。
珍しいウサギ
でも彼らもまったり
やはり暑いようなのだ
この広場で学んだウサギの生態を一言で言うなら、「ウサギたちは童話のように休んでいる時間が長い」だ。
会社で言えばグータラ社員、宗教観で言えば悟りの境地にいるような動物だった。
ものの見事にまったりすぎて、かなりSNS映えする画にならなかっただろう。
ただ、そんなまったりした姿を羅列してみると、まったりゆえに癒やされもする。
人工的に飾って映える画にするのもアリだろう。なら、こういう派手さはなくてもナチュラルな姿を切り取った画もアリに違いない。
負け惜しみの自己弁護のようであるが、これを今回のまとめとしたい。
写実派だ!(自称)
のんびりって、いいですなぁ。