先日、小松市に行った時に粟津方面にも車を走らせていた。
粟津温泉を下見して、その帰りの途中でちょっとした高台に小さな神社を見つけたので立ち寄ってみた。
狛犬はいないだろうかと、狛犬写真家を自称しようかと目論む男の血が騒いだのだ。
ちょっと高いところにその神社はあった
往路を運転中に見つけて復路で立ち寄ってみた。
この階段もなかなか急だった。
急な階段がある神社を見ると、お年寄りが参拝しづらいんじゃないかとつい考えてしまう。
そう考えながら、毎朝参拝している元気なお年寄りの姿も想像してしまう。
階段を登りきった先の景色
石造りの鳥居の他に、樹齢数十年ありそうな高い木も見える。
境内はそう広くはない。
右端に緑色のネットが見えるが、その先は崖だった。
このとおり「きけん」だ
危険だが、遠くを見渡せるので眺めは悪くない。
崖とは反対側に手水舎もある
ただ、水は出ていなかった。
水が出ていない代わりに、右側に蛇口とホースがあった。
その近くには材木置場も
どこか生活臭がする。
木材の「左」「右」が気になる。ちょうど左右になっている点も個人的にツボであった。
そして奥には社殿がある
ふたたびちょっとした階段があり、登りきったその先のガラス戸の中に社殿がある。
そして、そのガラス戸の前に、狛犬もいた。
この写真では比較するものがないため分かりづらいかもしれないが、こぶりな狛犬だった。
阿形の獅子だ
なんだろうか、この子犬のような趣は。
全身に白い石カビが斑のように広がって年季を感じさせるのに、その筋肉を感じさせない四肢に胴体、ピョコンと乗った尻尾、小さくあいた口、そしてつぶらな瞳が、どれも愛嬌に溢れているのだ。
口を開けている阿形の獅子って、もっといかつい雰囲気があるものだが、この子は見ていて頭をなでたくなる。
顔のアップ
耳も垂れている。
手のひらを乗せて撫でやすい頭の形だ。
石カビが顔の三割くらいに走っているが、これがなければもっと端正な顔つきに見えていたかもしれない。
その白色がまた雰囲気を柔らかくしているのだ。
足の形も犬のよう
ちゃんと爪はあるものの、形がリアルな犬の足のそれに見える。
足首にかけての肉付きも「こういう足をした犬、いるな」と思わせる。
それにしても、後ろ足の石カビが、まるでペンキをこぼしたように広がっている。
左側面がまた白い
ここまでくると白い柄だ。
尻尾の方では花が咲いているように見えるものもある。
やはり、いかつくは見えないのだ。
こちらは吽形の狛犬だ
阿形の獅子と比べるとこちらのほうが目付きが鋭く見える。
威嚇して、邪なものを寄せ付けない険しさがあるかのようだ。
そのお顔
やはり、吽形の狛犬の顔つきのほうが精悍に見える。
狛犬のほうがメスだという説を摂るなら、嚊天下(かかあてんか)という奴に思えた。
爪は…
かわいいですけどね。
鋭そうな爪があるのに足全体の肉質が柔らかで滑らかそうで女性的だ。
お座りしている後ろ足も、リアルな犬のかわいさがよく出ている。
そして、全体的に阿形の獅子と比べて石カビが少ない。
おそらく崖側にあり、山側より日が当たりやすいからだと思われる。
眺める先は鳥居…のさらに先だろうか?
こう、背中を見ても石カビは少ない。
そのせいか、背中の肌も滑らかそうに見える。
ところで、この神社、写っている鳥居に神社の名前が書かれていなかった。
このとおり書かれていない
反対側にも書かれていなかった。
鳥居の、よく神社の名前が書かれた、いわゆる神額がないのだ。
おかげでこの神社がなんという名の神社なのか、しばらくわからなかった。
狛犬の写真を撮る前に、自分は必ず参拝する。
神社によってはたまに鍵が閉まっていることがあるが、この神社では中に入れて参拝できたので、このときもそうした。
社殿のガラス戸を開けて賽銭箱を目にした時に、ようやくこの神社の名前がわかった。
「戸津 八番神社」だ
「戸津」はこの町の名前だ。戸津にある八幡神社ということだ。
あとで調べてみると、御祭神は「応神天皇」(おうじんてんのう)であった。
神社の名前もわかって、狛犬も撮り終え、いざ帰ろうとした時に、阿形の獅子のある山側に階段を見つけた。
山へと続く階段だ
この写真を見てわかるように、山側は高い竹林が影を作って暗い。
この神社に来た時は昼すぎだったのに、それにも関わらずこの暗さだ。
阿形の獅子が石カビだらけなのもなんとなくわかる。
さて、その階段の先が気になった自分は立入禁止の札がないことをいいことに、つかつかと歩いて近寄ってみた。
その先は、特に何があるわけでもなく、ただの竹林であった。
ただの竹林ながら、階段を登りきってみると日差しが気持ち良い場所であった。
太陽が高く見える
高い太陽のその光が届かない陰にて、拒魔(こま)している狛犬たちだったということだろうか。
こぶりながら殊勝だ。
石カビもその勲章のようなものだったのかもしれない。
それにしても、この竹林の写真、魚眼レンズだったらもっと面白い画になっていたんじゃないだろうか。
まだレンズを一つしか持っていない自分…
そろそろもう一本レンズを買ったほうが良いのではないだろうかと思った。