金沢市内には「金沢お宮さんめぐり」というものがあると以前、紹介した。
市内の主な神社36社を参拝しながらスタンプを集めるというものだ。
その36社の内、狛犬がいないという神社も数社あった。
狛犬写真家を自称しようかと目論む自分としてはそれもまた珍しく思えたので、紹介したい。
狛犬のいない神社は36社中3社
「金沢お宮さんめぐり」というと、当ブログでも逆さ狛犬がいる神社は何社あるのか数えたり、変わった狛犬を紹介したりした。
神社といえば、それが一つの様式美のようにだいたいどこも狛犬を境内に置いているもので、中には数対置いているというところも珍しくない。それとは逆に一つも見かけないというところがたまにあり、「金沢お宮さんめぐり」でもそういった神社を見かけたのだ。
結論を先に言うと狛犬がいない神社は36社中3社あった。
参拝しながらこのように印をつけていた
「松尾神社」
「八阪神社」
そして「猿丸神社」だ。
巡りながら写真も撮っておいたので、以下、順に載せたいと思う。
松尾神社
一つ目は松尾神社だ。
金沢市鶯町にある。ひがし茶屋街から卯辰山へと向かう途中にある。
町を歩いているとこの看板が見えてくる
見上げると階段と鳥居
坂の途中、家々が並ぶ中にあるのだ。
なお、この鳥居の扁額には「東乃祇園」と書かれてあった(ただし「祇」の偏は「しめすへん」)。
松尾神社の本社って、京都嵐山に鎮座する松尾大社なのだそうだ。祭神も祇園明神だ。
こちらが松尾神社の境内
広くない境内にさらにアーチがある。
おかげでさらに狭く感じられた。
この写真からもわかるように、狛犬の姿が見られない。
社の周りにも狛犬は置かれていなかった。
お賽銭箱もガラス戸の向こうにあり、手前の台にはスタンプや冊子が置かれていた。
台の様子
必要なものだけが置かれたコンパクトな社だ。
ただ…
庭はキレイだった
境内なので庭という表現は変かもしれないが、小さいながらもガーデニングをしているような印象があった。
自分が足を運んだのは6月の上旬であった。季節によってはあのアーチにも何か花が咲くのではないかと期待したくなる庭だった。
狛犬はいないけどフクロウがいた
フクロウ型の手水だ。
アーチといい、庭といい、このフクロウといい、コンパクトながらどこか西洋的なオシャレな神社だった。この雰囲気に狛犬は、たしかにちょっと合わないかもしれない。
扁額の両サイドにはもろ日本的墨文字が見えますが…
右側には「酒聖養生満足」と書かれてある。
この神社はお酒の神様も祀られていることで有名だ。酒業家の守護神「松尾明神」だ。
和洋折衷というか、コンパクトながら小粋というか、不思議な神社であった。
八阪神社
続いては八阪神社だ。
この神社は松尾神社以上に不思議、というかちょっと危うそうな神社であった。
場所は金沢市の寺町にある。
こちらも家々の間にあるのだが、さらに狭かった。
こんなところにある
寺町のメインの車道から少し逸れたところにあるので、自分は見つけるのに少し時間がかかった。
パッと見、ここが八阪神社なのかどうかも疑ってしまった。
こんなところなのでもちろん駐車場もない。
一応、案内板はあった
扁額もない石の鳥居をくぐるとすぐ左手にこの案内板がある。
そこにしっかり「八阪神社」と書かれてあるので、ここで間違はないようだ。
読んでみると、ここでも「祇園」の文字が見られる。「祇園社」と称しているようだ。
また、くぐった鳥居、赤戸室石で出来ているという貴重なものだったらしい。
改めて上の写真を見ると、たしかに赤っぽい色をしているのがわかると思う。
でも拝殿はどこか荒れている
境内は本当に狭い。民家の庭みたいな広さだった。
拝殿も左隣は長屋のように民家と繋がっているし、建物そのものも古さを感じさせるというか、荒れているように見えた。
見えたではなく、なんか、荒れている…
井戸やぐらみたいなものが倒れていた。
さらには扁額も
八阪神社と書かれた石製の扁額が割れて足元に置かれていた。
肝試しが苦手な人なら「ヒエェェェッ!」となりそうなものだ。
自分も流石に「これって祟り的な意味で大丈夫なのだろうか?」と思った。
大丈夫だろうかと思いながら…
開いていた隙間から拝殿の中を撮る自分
なんでも社宝として3代藩主前田利常公が幼時に愛用していた木馬と陣太鼓が保存されているらしい。ちらっと見える太鼓がそれだろうか?
奥には何かの像も見えるし、肝試しが苦手な人と夜に一緒に来たくなる。
スタンプはちゃんと置かれている
当然だが、セルフだ。
これだけが置かれているので、松尾神社以上にコンパクトだろう。
このコンパクトさと危うさなのでもちろん狛犬もいない。
境内の様子
何の木かわからないものが一本立っていた。
ものすごくミステリーな神社だった。
猿丸神社
最後は猿丸神社だ。
こちらは金沢市笠舞3丁目にある。
北鉄バスの東部車庫行きに乗っていると「猿丸神社前」というバス停があるので、子供の頃からその名前だけはよく知っている。
参拝したのは大人になってからだが。
猿丸神社だ
境内はまあまあ広い。先の2つの神社に比べると確実に広い。
広いけれど…
境内に狛犬はいない
あるのは灯籠だ。
また、境内には背の高いケヤキなどが何本もあり、拝殿が木陰にあるイメージある。
それら木々は猿丸保存樹林として金沢市に指定されてもいる。
スゴイところからも生えてますが
保存樹林だから簡単に切れないのだろう。
他にも、幹がなんというか人の顔にも見えたりする大木もあったりするからなかなか不気味だ。
でかくて太いのがドーン!
近寄ってみるとバーン!
はい、このように。
猿丸神社って、むかし「丑の刻まいり」という藁人形に五寸釘を打ち込んで願掛けをするところで有名だったらしいので、この顔のような幹にも何かしらの因縁があるように思えてくるのだ。
因縁とは関係ないけどキノコも生えていた
境内がそれだけ木陰(日陰)にあるということがわかるかと思う。
3つの中で一番普通の神社かなと思ったけど、ここはここでちょっとイーリー(不気味)なところだった。
狛犬がいない神社って、どこか普通じゃない…のかも。
猿丸神社で御朱印を貰ったときに狛犬がいない理由を聞いた
後日、再び参拝しに行って御朱印を貰ってきた
狛犬がいない理由を知りたくて改めて参拝しに行った。
ちなみに狛犬がいない神社には社務所もなく、基本的に御朱印を貰いづらい。写真の猿丸神社のようにどこでもらえるか案内が書かれてあっても、留守であるということも少なくないだろう。この日は呼び鈴を押しているときにたまたま神社の方が帰ってきてもらうことが出来た。
猿丸神社をちょっと不気味と書いたけど、対応してくれた方が腰の低い感じの庶民的なおばあちゃんだったので、そのイメージもすぐに飛んだ。ちっとも怖いところがなかった。
そのときの御朱印はこちら
こうして御朱印を貰った際に、なぜ狛犬がいないのか、何か特別な理由があるのか訊ねてみた。
すると「いやぁ、特にないんです」という返事がかえってきた。
なんでも、狛犬は拝殿の中にいるそうで、外に出していないだけなのだとか。
境内にその姿を確認できないだけで、いるのだ。少なくとも猿丸神社には狛犬がいるのだ。
なにか因縁めいた理由があるのかと思ったけど、その返事もまた庶民的なものであったのだ。
これを聞いて、自分の胸の中にかかっていた「偏見」という名の霧のようなものがすべて晴れた気がした。
最後にその拝殿を覗き込んだ自分
ところがだ、中に置いてあると言っていた狛犬の姿は見えなかった。
この隙間からでは見えないところにおいてあるのか、それとも拝殿ではなく本当は本殿の方に置いてあって神社の方が言い間違えたのか、再びちょっぴり胸にもやもやとしたものがかかるのだった。
やはり言い直そう、「狛犬がいない神社はプチミステリーである」と。
あしからず。