初心の趣

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珠洲市の「奥能登国際芸術祭2017」をのんびりまわる第四日目その4(最後39番目の作品)

石川県珠洲市にて9月3日より50日間にわたって開催されている「奥能登国際芸術祭2017」へ4回訪問し、NO.1~39まであるアート作品を、ときに寄り道もしながら順不同で少しずつ紹介してきたこの「のんびりまわる」も、いよいよ最後、39番目を残すだけとなった。

39番目は展示ではなくイベントだ。自分が四度目に足を運んだ10月14日、その日一回だけ行われていた。

演奏中、写真撮影は禁止されていたので、主に文章を使ってその39番目「饗の事導」(あえのことしるべ)を紹介したいと思う。

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39番 鬼太鼓座「饗の事導」

鬼太鼓座はこう書いて「おんでこざ」と読む。

1969年に新潟県佐渡で結成された和太鼓集団だ。

ガイドブックによると「過剰なパフォーマンスを極限まで削ぎ落とし、演奏者が全力で打ち込む音だけが聴衆の心に響く力を持つ」という信念で活動しているとあった。硬派な和太鼓集団だ。

 

シャトルバスで会場へ

会場は若山町経念(きょうねん)にある旧東若山小学校だ。

そこには駐車場がないので、「ラポルトすず」や道の駅「すずなり」から出ているシャトルバスを使って向かうことになる。

バスは17時から18時の間、随時出ていた。開演が18時半からなのだ。

バス乗り場では当日発売のチケットを求めて列ができていたようだ。会場も有限なのでもしかしたら買えなかった人もいたのかもしれない。

自分は事前にネットで購入していた。

バスに乗り込む時そのチケットを確認する。その際、39番目のスタンプも押してもらえた。

ここで押してもらったことで、自分の中で39番の案内板のことをすっかり忘れてしまって、いつも撮っている「番号、作品名、作者名」等が書かれた黄色の板を撮り損ねたことを先に報告しておく。

なお、自分は17時10分発のシャトルバスに乗って現地に向かった。

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現地に到着

真っ暗だ。旧小学校で現在使われておらず、また山の中にあるからか外灯も少ないところだ。

このように提灯の明りだけが頼りだった。

バスが停車したところから提灯に沿ってゆるい坂を登っていく。

すると会場が見えてくる。

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会場だ

この写真で言うと左手に受付があった。席はすべて自由席なので、どこに座ってもよい。

自分は早めのバスに乗り込めたので、到着したときにはあちこち空いていて席を選ぶのにかなり自由がきいた。

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ということで真ん前に陣取った

真ん前と言っても、舞台の配置が特殊で、写真に写っている目の前の舞台の奥にはさらに客席があり、その奥にメインとなる一番大きな太鼓も置かれていた。

また、写真で言うと右手、さらに右手後方にも舞台が設置されており、その右手後方の舞台を囲むように客席も設けられていた。

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会場を後方から撮った図

この写真では写っていないが、右手にさらに太鼓が並んでいたのだ。

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このように

演奏が始まると写真撮影がNGになってしまうので、始まる前にある程度撮った。

こういう特殊な舞台の作り方をしているので、ベストポジションというのはなかったと思う。自分の席からはこの右手後方の太鼓の演奏は見えづらかった。

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待っている間、影で遊ぶ親子連れもいた

舞台に向かって後方より照明が当たるので、待っている間こうして遊んでいる方もいた。

前の方にいる人たちは自分も含め比較的早くやってきた人たちなんだけど、待たされた時間が長かった分、体が冷えた。秋の夜の山は寒かった。

 

鬼太鼓座の演奏、始まる

18時30分に「饗の事導」(あえのことしるべ)は始まった。

一度照明が全て落ちて真っ暗になると、自分のすぐ目の前の舞台に光が当たって演奏が始まった。

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その舞台に並べられていた太鼓

附締太鼓というものだろうか。奥に見えるのは大太鼓(長胴太鼓)だと思われる。

軽快にバチで連打していた。どうやったらあんなに小刻みに叩けるのか、太鼓のことをよくわかっていない自分には訳のわからない速さだった。

それに合わせて笛(横笛か尺八。自分の位置からでは見えなかった)で「アメイジング・グレイス」も吹かれる。旧東若山小学校の去りし日の記憶を蘇らせるような調(しらべ)だった。

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途中、地元小学生たちとのコラボも

(こちらの写真は開演前に撮ったもの)

若山小学校の3~6年生らしい。スペシャルゲストだ。

自分の席からだと右後ろで演奏していた。

そこでは他にもう一組のスペシャルゲスト「御陣乗太鼓」(ごじんじょだいこ)の演奏も行われていた。

御陣乗太鼓といったらこの奥能登で知られる、鬼の仮面をつけ海藻みたいな髪を垂らした格好で叩く太鼓だ。

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こういうお面をつけて叩きます(少し見づらいですが)

(こちらの写真は公演終了後に撮ったもの)

その荒々しいバチさばきを見るため、自分が座っていた辺(右後方の舞台からすると後ろの方になる)の人たちは、そのときばかりは立ち上がっていた。

御陣乗太鼓の演奏が一度終わると、再び自分の目の前の舞台がライトアップ。

鬼太鼓座の演奏が再び始まった。その舞台の上では太鼓の他に箱みたいなものも置かれていて、演奏の途中で演奏者がその箱の中をガサゴソとやっていた。

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こういった箱だ(太鼓の横にあるやつ)

中からビニールで出来た音のなるアヒルの玩具や、木でできた空気鉄砲のような玩具を取り出し、太鼓の音のようにリズムよく鳴らしていた。

さらにリーダーの方(と思われる)がけん玉も取り出すと、大皿、中皿で玉を受け止める技を披露。これがまた上手いうえに、ちゃんと太鼓の音にあわせてカチャカチャとやるものだから会場からは拍手だ。

おまけにさらに大きなけん玉、またさらに大きなけん玉と取り出して、けん玉をサイズアップさせていくコントのような要素も織り交ぜていく。巨大なけん玉で、最後会場と一緒に音頭を取ってフリケンにも挑戦していた。

肉体をフルに使った硬派な和太鼓集団だけど、このときだけはエンターテイメントだった。

演奏は1時間半あるので、こういう息抜き的な要素が途中に入っていると、聴いている方としても助かる。

そして再び全身で叩くそのメリハリもまたカッコよかった。

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一番大きな太鼓を全力で叩いていた

この大きな太鼓を叩き始めると、演奏者はふんどし姿になっていく。

そこからは硬派一色だ。

皆さん鍛えているから隆々とした筋肉が叩くほど際立って見えた。

座って叩いていた大太鼓(長胴太鼓)も腹筋運動をするかのように足で抱えて叩きはじめる演奏者もいた。

どこまでも肉体で魅せてくるのだ。

なお、鬼太鼓座のメンバーの中には一人女性の方もいた。しかもハーフの方なのかアメリカから来ていたと言っていた。さすがに女性はふんどし姿にはならないが、半纏姿ですごい速さでバチを叩いていた。

ほかにイタリアから来たといういかにもラテン系の顔つきをした男の演奏者もメンバーにいた。その人はしっかりふんどし姿だった。

見えてはいけないものが見えていたのか、彼らのふんどし姿を見て指差しながらニヤニヤしていたマダム(観客)の姿も自分には印象的だった。もし見えていたら、それくらい懸命に叩いていたというわけだ。

すごい迫力のある太鼓だった。

見に来れてよかった。

 

終わりに

この会場の受付テントではスタンプコンプリート賞の応募の受付も行っていた。

39番のスタンプで鑑賞パスポートのスタンプラリーをすべて押し終えたという人は少なくない。

自分もそうだったので、太鼓の鑑賞後にテントに足を運んだ。

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39番のハンコの隣にコンプリートの証のハンコを押して貰える

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右下のがコンプリートのスタンプ

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このように全部押されました

自分はこうしてブログにて、作品について勝手に解釈して好き勝手書いていたように、基本的に作品を観ることに関心が向いていたので、スタンプラリーそのものはあまり意識していなかった。最後のスタンプを押してもらったときにようやく、「あ、集め終わったんだな」とスタンプを集めていた実感が湧いてきた。

このコンプリートスタンプを押して貰うと記念品としてポストカードももらえた。

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こちらがそのポストカード

ハガキだ。自分はこういうの、もったいなくて使えないタイプの人間だ。

そして、そのポストカードとは別にコンプリート賞を抽選でもらえるチャンスもある。

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その応募用紙がこちら

ポストカードをもらうときに一緒に手渡される。その場で書いて出してもいいし、後日書いて、「ラポルトすず」や道の駅「すずなり」に持ってきても良いとも言っていた。

自分はその場で出した。

ちなみにこの応募用紙には、今回の奥能登国際芸術祭2017の感想を書く欄もあった。

 

能登国際芸術祭2017の感想

能登国際芸術祭2017の作品も全て見て回り、鑑賞パスポートのスタンプラリーもコンプリートし終え、あらためてこの芸術祭を振り返ってみると、珠洲市の町の人達が皆さん楽しそうだったなと、そのことがまず最初に頭に浮かんだ。

町の人たちみんなでこの芸術祭を運営しているようで、その「人の力」というものをあちこちで感じられたことが、自分にとって一番感動したことだった。

そしてその結果、この奥能登にも多くの人がやって来たことにも、石川県人として感慨深いものがあった。

廃れていった鉄道や駅や家屋等々を活かしてアート作品を作り上げ、それらに再び光を当ててくれた美術家、芸術家、ア―ティストの人たち皆さんにも脱帽だ。

どの作品もユニークで、その土地の文化や歴史とも絡めてあるから勉強にもなった。

そう、作品を順に巡っていると、珠洲市というところがどんなところなのか見えてくるのだ。作品からも、またそれらが設置されている町を歩くことでも見えてきた。

この「のんびりまわる」でも何度か記したことだと思うが、こう、珠洲をより知れたことも、この芸術祭を振り返って良かった点だと自分は思う。

三年後、再び奥能登国際芸術祭をするかもしれないという噂もある。しかもそのときは珠洲市だけではなく能登町輪島市も跨ぐかもしれないとかなんとか…。

地方に活力を取り戻すにはこうした市を上げたイベントって必要だと思うし、今回の2017でその効果も証明されたと思う。何より、人間、こうした祭り事がないと人生なんてやってられないので、自分としても三年後に再び開催されるのを期待したい。

そのときは、出来れば自分も何かの形で参加できればいいなとも考える。少なくともこうしてブログで記事にして情報発信の役に少しでも立てればと思う。

このブログ、今回の芸術祭の情報発信の役に立ったのか?

その点は自分には不明だけど、見に行って、そして書いていて楽しかったことは確かだ。

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帰りのシャトルバスを待っている様子

列に並んでバスを待っている時、自分は最後尾の方にいたのだが、そのおかげで、着替え終えて撤収作業のために会場へ戻ろうとしている鬼太鼓座のメンバーが、我々並んでいる列の脇を通っていくところを近くで目にできた。並んでいた観客の皆さんは、目の前を通る鬼太鼓座のメンバーに拍手していた。本当にいいものを見れたのだ、自然とそうしてしまったのだろう。鬼太鼓座のメンバーも照れたように頭を下げていた。

もちろん、自分も拍手していた。その拍手はメンバーへの拍手であり、且つ「奥能登国際芸術祭2017」そのものへの拍手であったと、今では思う。

(「奥能登国際芸術祭2017」は10月22日までやっています)