初心の趣

カメラ初心者の石川県人が同県を中心に地方の変わった魅力を紹介しています

宝達志水町はオムライスの町らしいので食べに行った

石川県羽咋郡宝達志水町オムライスの町と呼ばれているようだ。

「何故?」と思ってしまうところだが、何故かモーゼの墓もある宝達志水町なので、あまり深く気にする必要はないだろう。

宝達志水町出身の知人の言うところによれば、どうやら呼ばれているというより、町を上げてそう呼ばせているようなのだ。

その宝達志水町出身の知人はこの手の地域活性化戦略に辟易としていた。でも自分は何でもいいから町おこしをしようとするそういったたくましさは嫌いではない。いや、むしろ好物だ。

何より、オムライスも好きだ。

調べてみると町にある8つのお店(食堂や居酒屋など)でそれぞれオリジナルのオムライスを作っているそうなので、先日その一件に足を運んでみた。

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宝達志水町はオムライスの町

 

 

オムライスを考案した人は宝達志水町出身らしい

オムライスはそもそも日本で誕生した洋食だ。オムライスという言葉も和製外来語だ。

諸説あるが、オムライスを考案したのは宝達志水町出身の北橋茂男さんだという。

北橋茂男さんは大正11年に大阪にて洋食屋「パンヤの食堂」を開業した方で、そのときに胃の弱い常連客のためにオムライスを考案したのだとか。「パンヤの食堂」はのちに「北極星」と改名している。「北極星」はオムライスで有名な洋食チェーン店だ。

宝達志水町が「オムライスの町」と呼ばせているちゃんとした根拠があるのだ。

 

宝達志水町の敷波には「やわらぎの郷」という、聖徳太子を信仰していた父親のために北橋茂男さんが建立した公園がある。

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公園内

「和を以て貴しと為す」とある。小学生の時だったか中学生の時だったか社会科で習った十七条の憲法の第一条に出てくる言葉だ。

聖徳太子と言ったら、やはりこれですな。

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園内には北尾茂男さんの像も

笑うセールスマンではない。北尾さんだ。

この方がオムライスを発案した人なのだそうだ。

なお、この茂男さんのご長男で現在の「北極星」の社長さんである北橋茂登志さんも、宝達志水町のオムライスの町プロジェクトに協力したという。

また、北尾茂男さんの誕生日が明治33年7月23日だそうで、そこから宝達志水町では毎月23日はオムライスの日として定め、町内加盟店で特別サービスも行っている。

茂男繋がりで成り立っているプロジェクトなわけだ。

 

お好み焼き屋でオムライスを食べた

オムライスの町プロジェクト加盟店8つは、同プロジェクトのHPに地図付きで載っている。

宝達志水町の知人にオススメを聞いたところ、どこも食べたことがないのか答えてもらえなかったので、自分の勘で選ぶことにした。

そして勘といいつつ、結局HP上で一番最初に紹介されているお店に行くことにした。

地図で見ると、金沢から一番近そうだったからだ。

お店の名前は「粉もんや もりまる」だ。

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地元のスーパーの隣にある

「生鮮館ちゃれんじ」というスーパーマーケットの隣にそのお店はある。

スーパーの隣とはえらい庶民的な香りがするなと思って店の前に立ってみると…

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お好み焼き屋さんだった

オムライス=洋食屋さんだと思っていたので我が目をちょっと疑った。

ただ、この予想の裏切られ方は自分としては嬉しい。

お好み焼き屋でオムライスという画を想像できかったので、却って好奇心がわいたくらいだ。

なお、このもりまるさんでは毎月10日、20日、30日を「もりまるの日」としてお好み焼きを半額で提供している。

正直、そっちにも惹かれた…

入ってみると、むかしのあだち充マンガに出てきそうな下町っぽいお好み焼き屋だった。

入っただけで地元に帰ってきたような、その庶民の香りが自分には心地よい。

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お好み焼きにも惹かれたけど…オムライスを注文

そばめしオムライス」という。

こちらで750円だ。味噌汁にお新香もついていた。

写真では具材がわからないが、アサリのお味噌汁だった。

撮影はもちろん許可をもらっている。快く許可をもらえた。

お店は夫婦でやられているんだと思うけど、接客してくれた女性の方は明るく優しくはっきりとした方だった。

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旗が立っている

「おむてなし」とある。

宝達志水町出身の知人から噂は聞いていたが、「おむてなし」だ。

オムライスとおもてなしを… と説明しなくてもわかるか。

宝達志水町出身の知人は気に入らないと言っていたが、ツッコみやすいので自分は嫌いじゃない。

真ん中の犬のようなネコのような熊のような黄色いキャラクターは「オムライスくん」というらしい。

このオムライスくんをちょっと調べてみると、山口明さんというデザイナーの方が生みの親であることがわかった。

「オムライス」の文字もオリジナルの「オムライスフォント」だそうだ。

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マヨネーズはお好みで

 からしマヨネーズとわさびマヨネーズだ。

さすがお好み焼き屋だ。

ちなみに自分はわさびの方を使った。

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かけたあとの様子

うまそうだ。

いや、実際食べてみて美味しかった。

タマゴの下にはその名のとおり「そばめし」がいた。

ソースで味付けされた、細かく切られた焼きそばとご飯がいるのだ。

小さな肉も入っていて、お好み焼きの肉の味がした。

面白いなと思いながらバクバクと食べて、気がついたら途中の写真を撮るのを忘れていた。

オムライスプロジェクトと聞いて、勝手に都会風の小洒落たオムライスばかりを想像していたけれど、小洒落たオムライスばかりでは絶対に飽きていたなと、最初のこの「そばめしオムライス」で悟った。それくらいインパクトがあって、嬉しい裏切られ方だった。

 

後日、別のお店にも

そばめしオムライスを食べた一ヶ月後くらいに再び宝達志水町に立ち寄ったので、思い出したようにオムライスを食べに行った。

正確には北橋茂男氏の像がある「やわらぎの郷」の側を通ったときに思い出し、その公園のすぐ近くでプロジェクト加盟店である「志お食堂」を見つけたのだ。

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偶然見つけた「志お食堂」

建物の側面に書かれた「志お食堂」の文字に思い出すものがあり、続けてオムライスの旗も目にして確信に変わり、その確信から立寄っていた。

写真で見てわかるように、昔からある地元の食堂だ。

小洒落たレストランでも都会の洋食屋でもない。

そう思って行った一軒目がお好み焼き屋だったときと同じように、嬉しい裏切り方をされた気分であった。

中に入ってみると、60歳は間違いなく超えているであろうおばあちゃんが接客してくれた。

厨房にはその息子さんかお孫さんか、若い男の人がコックとして立っていた。

店内にはほかに、接客してくれたおばあちゃんと同じ歳くらいの、やはりおばあちゃんが3人ほどいて、自分と目が合うと「いらっしゃい」といった具合に会釈をしてくれた。

何人で切り盛りしているのだろうか?謎だった。

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メニューからして定食屋

メニューを見ても地元の定食屋だ。

裏にはうどんやそばも書かれてあった。300円くらいの手頃な値段だったので、地元の人たちが気安く食べにこれる。

目的のオムライスは、このメニューで言うと「ポークソテーオムライス」になる。

壁にプロジェクトのポスターが貼られていたので、迷うことなく、お冷を運ばれた時にすぐに頼んだ。

それにしてもこの志お食堂、メニューを見るとオムライスだけでも4種類もある。

ボルガライスというのも、福井県越前市のご当地オムライスだ。オムライスの上に豚カツを乗せたものらしい。

なんでもこのお店、越前市と北海道富良野市とで2014年にオムライスの「三国同盟」なるものを結んでいるそうで、越前市の「ボルガライス」と富良野市の「オムカレー」も提供しているとのことだった。

さすが北橋茂男像の一番近くにあるお店だな、などと思ってしまった。

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オムライスが来た

オムライス三国同盟の石川県宝達志水町代表はこの「ポークソテーオムライス」になる訳だ。

お味噌汁とお新香がついて1000円だ。

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やはりいたオムライスくん

プロジェクトのオムライスには目印として必ずこの旗がついているようだ。

ポークソテーオムライスはその名の通り、ポークソテーが添えられている。

上質豚のロースをニンニク、醤油、バターで焼いてある。

定食屋だ。

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中はケチャップライスではない

中は醤油風味のライスだった。

子供の頃、白ご飯にやたらと醤油をかけて食べていたことがあったけど、醤油とご飯って合うんですよね。

そんなもので食べてみると、むちゃくちゃ懐かしい味がした。

この庶民の味は自分の舌にあう。いや、美味い。

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庶民的と言えば、店の中もこんな感じ

自分は奥の座敷の方に座ったのだが、どうですか、この生活感あふれる雑多な感じ。

なんだか子供の頃に七尾の祖母の家に行ったときと同じ匂いがした。

雰囲気で言う「ニオイ」ではなく、ちゃんと臭覚としての店の中の「匂い」が同じだった。

なお、このお店にはクーラーがなく、窓を開けてあるだけであった。

そういうところも懐かしくなった。

 

感想

どうだろうか、行ってみると二件とも庶民のお店だった。

プロジェクトを立ち上げても新たに小洒落たお店を町内に作るのではなく、地元の長く愛されているお店を活かすというその姿勢、地産地消の精神みたいで好みだ。

けっして都会ではない宝達志水町らしさがある。

自分としてはますます同プロジェクトのファンになった次第だ。

余談だが、二件めの志お食堂にてお会計を済ます時「何人できりもりしているんですか?」と訊ねたら「二人」だと教えてくれた。

それ以外の3人(いや、帰り際にはもう1人、2人増えていた)のおばちゃん、おばあちゃんたちは常連客だった。

その常連客の方々にも帰り際「(お店に来てくれて)ありがとう」といった感じで挨拶された。

この田舎らしいアットホームな人情は、都会のモダンで小洒落たお店ではなかなか味わえないのではないだろうか。

 

もっとも、プロジェクト加盟店にはカフェもある。小洒落たお店もあるようなので、一概に庶民的で懐かしいお店ばかりではないようだ。

そういった選定も上手いと思うし、次に行ってみたくもなった。

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北橋さんの像、「次にあっちの店に行きなさい」と言っているように見えてきた

また食べに行こう。