初心の趣

カメラ初心者の石川県人が同県を中心に地方の変わった魅力を紹介しています

夕日が綺麗だという志賀町の「世界一長いベンチ」の昼間の魅力をさぐる

石川県の志賀町富来領家町(旧羽咋郡富来町領家町)の増穂浦海岸には「世界一長いベンチ」というものがある。

正確には世界一長かったベンチで、昭和62年(1987年)に全長460.9メートルで記録されたギネス世界一も2011年には石川県のお隣である富山県南砺市瑞泉寺前にあるベンチ(全長653.02m)によって塗り替えられている。

また世界に目を向けると、ギネス登録されているのかされていないのかわからないものながらこれら志賀町南砺市より長いベンチがいくつか存在するようだ。

定量的に見れば確かに長さ世界一ではなくなっているものの、ここは「サンセットヒルイン増穂」と呼ばれているだけあって、晴れの日にはベンチに座りながらきれいな夕日を眺めることができる。

恋人たちのデートスポットにもなっているようで、定性的な価値はまだまだ高い。

そんな夕日がキレイな「世界一長いベンチ」に足を運んでみた。

しかも自分は夕方ではなくあえて昼間に行ってみることにした。

観光客は時間の都合上、昼間に来ることが多いと思われるので、昼間のベンチがどのように見えるのか、昼間のベンチにはどのような魅力があるのか確認したいと思ったからだ。

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目印はこの道の駅

道の駅「とぎ海街道」だ。

国道249号沿いにある。正確な住所は「石川県羽咋郡志賀町富来領家町タ2−11」だ。

この道の駅の裏の海岸に「世界一長いベンチ」があるのだ。

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今でも案内には「世界一」

写真の左上に見える階段を登っていくと海岸に出る。

砂浜へ下りていく手前にそのベンチがある。

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世界一長かったベンチだ

左の端っこから撮ると、自分のカメラとレンズでは右端が見えない。

肉眼でもよほど目が良くないとなかなか確認できないだろう。

1346人が一斉に座ったという記録もあるくらい、長いのだ。

石川県の県木である「アテ」で作られたベンチそのものは、潮風を受けているせいかだいぶペンキの色も落ちている。

1987年(3月29日)にできたわけだから、2017年でもう30年経つのだ。

 

ベンチを順に撮っていく

ベンチの風合いをそのまま伝えたいがため、ここから画像の羅列が続くことになるので、あらかじめご容赦いただきたい。

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真っ直ぐではないベンチ

このようにところどころ湾曲している。

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途中、東屋のようなところも

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屋根は骨組みとネットで形成

雨は凌げそうにない。

この東屋のようなものはベンチ全体で3箇所ある。それぞれにテーブルも3つずつ置かれ、吸殻入れや水飲み場も設置されている。

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吸殻入れだ

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水飲み場

捻じ曲げられたのかと思うほどすごい角度だが、ちゃんと蛇口を回せば水は出た。

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桟橋や仏像もある

桟橋のある通路を右手にまっすぐ進むと先程の道の駅と繋がる。

仏像の後ろの石碑は「岸壁の母」の碑だ。

戦時中、ソ連の抑留から開放されて戻ってくる息子を待つ母親たちを岸壁の母(がんぺきのはは)と呼んだ。そのうちの一人である「端野いせ」さん(富来町出身)はソ連からの船が来るたび岸壁に立って6年間待つも、子供は結局戻ってこず、戦死と認定された。

戦争の悲劇と慈母の愛を讃える石碑であり、仏像なのである。

もっとも、いせさんの死後、2000年の8月には、その息子が実は中国で生きていたことが判明している。自分が死んだことで有名になった母の名誉を傷つけたくないため、帰るに帰れなかったそうだ。

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桟橋の下もちゃんとベンチが続いている

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途中、東屋みたいなところ以外にもテーブルがある

湾曲につき必ず一つずつテーブルがある。

東屋みたいなところ以外のこれらのテーブルはベンチ全体で19個あった。

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ベンチ中盤、ホースのようなものが絡まる背もたれも

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外灯から伸びていた

ホースじゃなくてケーブルかもしれない。

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大胆に座る部分に横たわるホース(ケーブル)

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ベンチの裏でヘビのようにうねるホース(ケーブル)

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別の外灯を中継地点にしているホース(ケーブル)

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タンポポを尻に敷くホース(ケーブル)

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最後の外灯にゴールしたホース(ケーブル)

ベンチを追わずにホースを追ってしまった。

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ベンチもゴールに近づいてきた

遠くには風車も見える。風力発電のものだそうだ。

それにしても天気が良いと海も空もきれいだ。

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最後の東屋(っぽいもの)を通過するとベンチの端が見えてくる

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端(ゴール)だ

460.9メートルもあると、端から端まで歩くだけでなかなかいい運動になる。

自分は写真を撮るため何度も往復してしまったので、なかなか疲れた。

疲れたけれど、そこはベンチだから座って休めば良い。

座って、海と水平線と、それらにのしかかる澄んだ空を見上げながら風に吹かれているだけで時間を忘れてしまうくらい心地よい。

夕日がきれいなのは百も承知ながら、昼間のこの海辺のベンチも良いものだ。

 

ベンチの先の先にはモニュメント

ベンチの端にたどり着くと、その先に何があるのかと気になる方もおられるかもしれない。

自分もその一人だった。

実際自分の足と目で確かめてみると、ベンチの先にはさらにどこかに続く道があった。

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ドラクエチックな柱が並ぶ階段があった

看板には「幸せを呼ぶモニュメント」とがあると書かれてあった。

この柱とその案内とを合わせて、自分はふと宝達志水町の「モーセの墓」を思い出してしまった。

個人的に、あの手のセンスは好物だ。

ワクワクしてしまった自分は階段を下り、山の中の道を進んでいった。

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途中、スプリング仕込みのベンチがあった

マリオのジャンプ台にも見えたがそうではない。

座ると、バランスをとるのがなかなか難しい。

鉄板のようにも見える板は木製であった。日にあたっているので少々熱い。

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傍にはこんなアスレチックな遊具も

ますますマリオじゃないかと思った。

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進むべき道もなんだか獣道

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薪や階段があるのでたぶん人間が踏み固めた道

写真の階段を登っていくと…

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登った先にまた柱

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この道を通れということらしい

なんだか柱に導かれている気がした。

そしてその先には…

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八幡宮発祥の「岩船記念石碑」があった

ここに八幡神社御神体が流れ着いたという伝承があるのだ。

何でも岩舟で流れ着き、領家町の住吉社の女神と結ばれたとか。

この石碑は、皇紀2600年に当たる昭和15年に有志によって建てられている。

また、モニュメントというのはこれだけではない。

この石碑の向かいにもう一つある。

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こちらがそのモニュメント

「太陽のモニュメント」と言うそうだ。

確たる資料はないが、岩舟伝説の岩舟をイメージして作られたとも言われている。

なんだか宇宙船のようにも見える…。

そう思っていたら、隣の案内に岩舟伝説の解釈が載っており、宇宙的繋がり云々との一文も見かけた。

そうなるとこの岩舟モチーフがUFOのようにも見えてきて、岩舟というのがUFOだったんじゃないかと思えてきた。

なら、岩舟伝説の八幡の神さまは宇宙人じゃないかと…

いや、この連想はやめにしておこう。

科学的なロマンはあるけど、宗教的なロマンを壊しかねない。

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モニュメント内の足元には十二支の文字

十二方位という奴だ。「子」が北に当たり、「酉」が西に当たる。

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このリングは西を向いていることになる

能登半島の西側にあり西能登とも言われる富来町(志賀町)らしいといえばらしい。

 

これらモニュメントのある場所、獣道のようなところを通ってやって来たので人があまり来ないような高台にあるかのように思えるが、そういうところではない。

むしろ逆だ。

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グランドゴルフ場が近くにある

ご老人たちの活気のある声が届いて賑やかであった。

長閑と言えば長閑でもあるし、ある意味これが獣道を歩いた先に見つけた楽園というものだろうかとさえ思えてしまった。

なお、遠く右の方に見える三角の形をした建物は先程の道の駅「とぎ海街道」の傍にある「シーサイドヴィラ渤海」という名の宿泊施設だ。

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近くに寄ってシーサイドヴィラ渤海を撮影

まるでピラミッドのような形をしている。

宇宙的だったり神秘的な繋がりをここでも連想しそうになった。

空の雲すらも怪しく見える。

ちなみにここ、温泉もあり、温泉だけ入ることもできる。

 

再び世界一長いベンチへ

ぐるっと一周してきて再び道の駅「とぎ海街道」に戻った。

そこでもう一度ベンチの方へと出てみる。確認したいものがあったのだ。

というのも、この世界一長いベンチの背後にずらっと手形のパネルが並んでいたのだ。

 

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ベンチの背後に並んでいる

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手形だ

三色ある。

それぞれに作成した日にちと手形を作った人の名前、また〇〇記念といった一言が添えられていた。

一枚に一人の手形もあれば、一枚に親子で押してあるものもあった。

最初の方の人を見ると「94年」と彫られている。

それぞれ制作された順にシリアルナンバーも彫られており、一番新しいものは「4639」とあった。

現状4639枚の手形パネルが並んでいることになる。

この手形パネル、なんでも道の駅「とぎ海街道」のお店にて申し込めば旅の記念に作ってもらえるらしい。

 

その道の駅「とぎ海街道」のお店だが、営業時間が17時30分までだ。(駐車場はそれ以降も開いている)

仮に夕日だけを見るため日の入り近くに来ようとすると、だいたい初夏の日没が6時50分くらいなのでそのときにはもう店が閉まっていることになる。

手形を作ろうとするなら、明るい内に来なければならないわけだ。

 

道の駅「とぎ海街道」はソフトクリームも美味かった

その「とぎ海街道」のお店では地元産のお土産が売られ、食堂もある。

何か食べるもので名物だとか珍しいものはないかと店の前に立つと、こんな看板を見つけた。

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なんだか怪しかった

とぎ男爵のソフトクリームがどうのではなく、この芋の画がファンキーだった。

こういうのを見せられると…

却って買いたくなるのが自分という人間だ。

夕日が綺麗だと言うのに昼間にこのサンセットヒルイン増穂のベンチにやって来たりしているところから察しのいい人はわかっていると思われるが、自分は天邪鬼(あまのじゃく)だ。

普通の人とは逆のことをしたくなってしまう。

これはもう昔からの性分だからしょうがない。

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そんなもので購入した

こちらがその「とぎ男爵のソフトクリーム」だ。

富来の男爵いもを使用している。

受け取る時、カウンターにて店員の方に「お好みで塩をかけてどうぞ」と言われた。

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カウンターに塩が置かれているのだ

お好みも何も初めて食べるわけで、よくわからないので気持ち程度に軽くふりかけた。

食べてみると、なるほどソフトクリームの中に芋の味がいる。

くどくなく、甘すぎず、あのファンキーなイモのキャラクターのわりに食べやすかった。

さて、食べていると先程軽く塩をかけたところを舐めることになる。

するとまあ、しょっぱいはずなのにその塩が却って甘みを引き立ててくれる。

おまけに、芋の味にポテトチップスを食べているときのような安心感を与えてくれるというか、「あ、これだよね」という絶対的なハーモニーを堪能させてくれる。

めっちゃ美味いのだ!

美味すぎて、気がつけば何度もカウンターに行き、何度も塩をかけてしまっていた。

店員さんに聞くと、焼いた塩を使っているそうな。

 

食べ物ではほかに芋系の「ハリケーンポテト」という気になる名前のものが売られていた。

その紹介文が「食べてみまっし、超旨い」といった類のフランクなものであったので、これまた購入した。

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ハリケーンポテトだ

ポテトが螺旋状に切られてそのまま揚げられていた。

揚げたてだからかホクホクして、芋の味もしっかりとしている。コンソメ系の味付けとも相性がよく、上からバネを伸ばすように食べていた。

旨い上にユニークな商品だった。

 

改めていう。

これを食べるにも店が閉まる17時30分前にはこの「世界一長いベンチ」へとやってくる必要がある。

他にも食べたくなるメニューや特産品が売られているし、夕日が綺麗とは言え、昼間に来ても楽しめる要素はあったのだ。

 

まとめ

夕日以外の魅力を求めて、「世界一長いベンチ」を昼間に撮り歩いてみたがいかがだっただろうか。

自分としてはソフトクリームが旨すぎたので、再び来るなら店が空いている時に来たいものだと思った。

最後に、完璧なサンセット(日没)ではないが、日が傾きかけた頃に改めて世界一長いベンチで撮った写真を上げたいと思う。

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それっぽいのが撮れた

ケルビンで言うと8000くらいだろうか、ホワイトバランスを赤みに振って撮っている。

日没前でも、撮りようによってこういった写真が撮れるようなのだ。

日没時はもっときれいかもしれないが、日没が絶対ではないのだろう。

 

追記

もう一つ付け加えておきたいことがある。

この世界一長いベンチ、潮風にさらされて色が剥げ落ちるので5月18日に地元の小学生や中学生たちに手伝ってもらって色を塗り直したそうだ。

2014年から毎年塗り直しているらしい。

今回上げたこれらの写真は塗り直す数日前の写真である。

そして後日、近くを通ることがあったので改めてその塗り直されたベンチを見に行った。

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キレイになっていた

比較してみると明らかに綺麗だ。

なんでも「世界一きれいなベンチ」を目指しているという。

今回上げたベンチの色の明らかな違いを見、子どもたちがせっせと塗ったことを考えると、仮に売店で買った物をここで食べたとしてもゴミは出せないなと、大人のモラル感覚を改めて意識させられるのであった。