映画ソムリエを目指す猫

〇〇なときに観たい映画をレビューしており候。

『旅するジーンズと16歳の夏』 友情の象徴が欲しいと思ったときに観たい映画

旅するジーンズと16歳の夏

公開:2005年10月1日(日本での公開)(米国映画)

上映時間:119分

監督:ケン・クワピス

製作:デブラ・マーティン・チェイス

脚本:デリア・エフロン、エリザベス・チャンドラー

撮影:ジョン・ベイリー

編集:キャスリン・ヒモフ

音楽:クリフ・アイデルマン

出演:アメリカ・フェレーラ、アレクシス・ブレデルブレイク・ライヴリーアンバー・タンブリン、他

 

あらすじ

きれいだが内気なリーナ、ドキュメンタリー映画を撮る反逆児のティビー、仕切り屋でサッカーをしているブリジット、書くのが好きでぽっちゃり系のカーメンは、母親同士が妊娠教室で一緒だったことから生まれる前から大親友の女の子四人組。性格も体型も違う彼女たちだが、16歳の夏休み前に四人全員が穿けてしまう一本のジーンズをお店で見つけてしまう。ギリシャの祖父母の家で過ごしたり、サッカー合宿に行ったり、離婚した父親に会いに行ったりと夏休み中バラバラになる四人は、一週間ごとにそのジーンズを穿き回すことを決定。旅するジーンズが彼女たちに勇気をくれる…?

 

レビュー目次

 

センスと友情に憧れてしまう

私のように年がら年中毛皮に包まれて衣服を必要としない猫からすれば、友人4人でジーンズを穿き回すという考えなど、仮に20年生きたとしてもまず思いつかないだろうと思われるので新鮮な感性であった。

特に私はオスなので、女子たちの友情の深め方にはいちいち眩しいものを感じてしまう。これがメスの猫であれば、もっと共感できるものも多かろうと思う。私も猫であるがメス猫の心情、センスのことなどよく知らん。人間世界同様にネコ界にも男女に隔たりがあるのである。

そんな猫でオスの私がこの手の映画を観てまったく共感ができないかと言えばそうでもない。本音を言えばしっかり共感している。それもただの共感ではなく、共感を超えて強い「憧れ」を抱いてしまう。

四人全員が穿けてしまう魔法のようなジーンズが登場することにも憧れれば、夏休みの間にバラバラになっても郵送して穿き回そうとするその友情にも憧れる。

人間はどうか知らないが、私たちネコ界のオス同士の付き合いなど先に食うか食われるかの競争原理が基本にある。特に野良猫がその原理によく従っている。私のような家ネコはだいぶ争い事から外れた生活をしているが、それはそれで外で他の猫と友情を育むことも出来ないので、やはり友情なるものに憧れを抱いてしまうのだ。

 

決して幸福の4人ではない

劇中の4人の女子たちは、そうかといって決して順風満帆な生活を送り、幸福絶頂の夏休みを過ごしている訳でもない。

内気なリーナはギリシャで初めて知った恋愛感情を、相手の男の家系の問題で祖父母たちから反対されている。

仕切り屋でサッカーをしているブリジットも子供のときに母を亡くしていて、そのトラウマから逃げるように明るく強く勝ち気に振る舞ってコーチとの恋にも熱を上げようとしている。そんな精神状態での恋愛では、成就しても次には虚しくなるもののようだ。

本作の語り部のような地位にいるカーメンにしても、子供のときに両親が離婚している。夏休みを利用して父親に会いに行っているのに、その父親が別の女性、しかも自分と似たような世代の子供が二人もいる女性と結婚しようとして、すでに一緒に暮らしているものだから、居場所がないと感じてしまう。

さらに一人地元に残って町の「負け犬」を題材にドキュメンタリーを撮っている奔放なティビーは、住所が間違ってジーンズが配送されたと届けてくれた小学生くらいの女の子に「助手をしたい」(一緒にドキュメンタリーを撮りたい)と押しかけられている。助手どころか勝手にインタビューしてしまう(しかも聞き上手な)女の子にうんざりしながらも、その子が白血病だということを知ると複雑な気持ちになる。

4人のもとに順番に回ってきたジーンズも、魔法のジーンズだと思えるような効力をなかなか発揮してくれない。むしろあのジーンズを穿いていたときに良くないことが起きたと手紙に記す娘もいたくらいだ。

 

友情の象徴

ただ、それでもこの猫の目からすれば彼女たちに憧れるものである。そして羨ましい。

よくできたドラマであるから、遠く離れた4人の悩みや心の傷をジーンズが伝えてくれている。バラバラになっていても4人の友情を常に結びつけてくれている。そしてその友情が、彼女たちの悩みや心の傷を快方へと向かわせている。

先にも記したように4人の友情が眩しいのである。先に苦悩があるからこそ、後にそこから救ってくれる友情なるものが偉大に思えてしまうのだ。

また、ジーンズに魔法力がないと言ったものの、まったく「力」がないわけではないこともわかるだろう。作中、白血病の女の子はこうも言っている。

「もう魔法は利いたよ、あなたに会えた」

あのジーンズは友情を育て、ときに新しい友情を作る力も持っている。その後の運命を切り開くのは彼女たち自身であるが、それを支えているものが友情であり、その象徴が旅するジーンズなのであろう。

私にも欲しいのだ、友情の象徴なるものが。そして思うのだ、猫の場合は何を象徴とすればよいのかを。人間と猫の間での友情の象徴といえば、ネコ缶だろうか。ネコ間での友情の象徴といえば…さて思いつかん。この映画を参考にするなら、人間のジーンズを寝床代わりにして、それをネコ間で共有することだろうか…。結局取り合いになるかも知れんので、人間の女子が羨ましい限りである。

 

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